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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1560 ソノ・オーサトさん追悼〜物凄い日系人バレリーナ
「新年早々ソノ・オーサトさんて誰なの?」
 皆さまぶちギレ寸前のお顔が目に浮かびます。
 ソノ・オーサトさんは「物凄い人生をおくった日系人バレリーナ」です。

 ソノさんは、2018年12月26日に99歳で亡くなりましたが、日本ではほとんど報道されませんでした。この事は同じ日本人として、踊りに生きている人間として大変残念な事であります。さらに残念なのは同じダンサーとは言え私はタップ界の人間ゆえ、ソノさんがバレエ界で何がどう凄いのか?凄かったのか?を上手くお伝え出来ないのですね。
 まあいいか?
 私の情報源はソノさんが1980年に書き、日本では晶文社から1995年に発売された自叙伝『踊る大紐育/ある日系人ダンサーの生涯』と、ソノさんが出演した唯一のミュージカル映画『The Kissing Bandit』でのダンス・ナンバーだけです。それでは、ソノ・オーサトさんの何が凄いのかを順に書いて行きますね。

ソノさん伝説その@
 日本式に見れば大正8年生まれのソノさんは大正を少し、昭和を全部、平成のほとんど全部を過ごした。

ソノさん伝説そのA
 関東大震災を横浜で体験、パールハーバー奇襲のニュースをニューヨークで聞き、911を現地マンハッタンでなど歴史的瞬間と遭遇している。

ソノさん伝説そのB
 14歳でロシアの名門バレエ・リュス・ド・モンテカルロ(映画『バレエ・リュス』コラムVol.73をご参照)のメンバーになった唯一の日系人。

ソノさん伝説そのC
 バレエ・リュス・ド・モンテカルロでは、レオニード・マシーン(映画『赤い靴』)から振付を受け、タマラ・トゥマノワ(コラムVol.1485をご参照)やヴェラ・ゾリーナ(コラムVol.1202をご参照)と一緒に踊った!

ソノさん伝説そのD
 日本とアメリカが戦争しているのにブロードウェイの舞台で踊っていた!

ソノさん伝説そのE
 ブロードウェイ時代の主演がミュージカルの女王メリー・マーティン(『南太平洋』)、振付師がアグネス・デ・ミル(『オクラホマ』)、そしてダンサー仲間がジェローム・ロビンス(『ウエスト・サイド物語』)。

ソノさん伝説そのF
 ブロードウェイ・ミュージカルの名作『ON THE TOWN』で日系人なのに主役のアメリカ娘アイヴィ・スミスを演じた!

ソノさん伝説そのG
 MGMミュージカル映画であの大歌手フランク・シナトラを前に堂々のソロ・ダンスを踊った!

ソノさん物伝説そのH
 ハリウッド映画撮影中の下宿先がビバリーヒルズのジーン・ケリー(映画『雨に唄えば』)のお屋敷だった。

 バレエ・リュス・ド・モンテカルロ時代とアメリカン・バレエ・シアター時代にレオニード・マシーン、ニジンスキー、ジョージ・バランシンの作品を学んだエピソード等はタップダンサーの私よりもバレリーナの方々に、より価値があるはず。¥4900と高価ですがぜひソノさんの自叙伝を読んで頂きたいものです。
 今年、宝塚歌劇団が上演する『ON THE TOWN』に関する中で面白かったのが、「戦争のさなかにブロードウェイ・ミュージカルが(敵国)日本人の血が混ざっている人間をアメリカ娘の典型として出演させ、そして観客も何のためらいもなくそれを受け入れた事。これは全く舞台の魔術にほかならない」というソノさんの言葉でした。

 ハリウッドのMGM撮影所でのメイクアップ、衣裳合わせ、カメラテスト、振付の混乱ぶりが興味深く書かれていて面白いので何年ぶりかで映画を観ましたが、フランク・シナトラにとっても、MGM映画にとっても、ソノさんにとっても最悪な結果に終わったようです。MGMはバレリーナではなくフラメンコ・ダンサーを雇うべきだったのです。
 ただ、今や伝説のMGMミュージカル映画に日系人が出演して、画面一杯に踊る姿は実に誇らしい事です。

 皆さまいかがでしたか?
 いつの日か日本のテレビ番組で『こんな凄い日本人がいた!』なんて特集が組まれるかも知れませんね。
 今年の8月に100歳を迎えるはずだった伝説のバレリーナ、ソノ・オーサトさんのご冥福をお祈りいたします。

天野 俊哉



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