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Vol.1202 生誕100年ヴェラ・ゾリーナ〜ハリウッド映画のグラマラスなバレリーナ
 先日、テレビの映画劇場でイギリスのバレエ映画の名作「赤い靴」(1948)を観ました。
 主役のバレリーナ、モイラ・シアラーの清楚な美しさは、何十年たっても色褪せません。
 モイラ・シアラーは、イギリスと言うよりバレエ界が生んだ最大のスターですが、それ以前のスターって誰だろう?と考えた時に登場するのが、ハリウッド映画で活躍したドイツ人のヴェラ・ゾリーナです。
 バレエ界のレジェンドである振付家ジョージ・バランシンが惚れ込んだバレエのテクニックをはじめ、映画向きの美貌、グラマラスなスタイルetc.
 敏腕プロデューサー、サミュエル・ゴールドウィンにスカウトされ「Goldwyn Follies」でデビュー。
「On Your Toes」
「I Was an Adventure」
「Louisiana Purchases」
「Star Spangled Rhythm」
「Follow the Boys」
等のバレエを生かした作品に主演またはゲスト出演。
 たったひとつ私が気になったのは、ドイツ語の訛りでした。せっかく台詞のある役であっても英語が流暢でないので、アメリカ人の俳優とのバランスが悪かった。
 もともとハリウッド映画界は、ヨーロッパの芸術肌に弱いので、ヴェラとバランシンに飛びついたのも無理はありませんが、やがてどう使ったら良いのかを模索したのち、ヴェラを捨てました。
 そのきっかけとなったのが、まさかのアーネスト・ヘミングウェイ原作「誰が為に鐘は鳴る」でした。ゲイリー・クーパーが堂々の主演をした映画史上の名作。ヴェラは、そのヒロインであるマリア役に選ばれ、髪をショートにし、撮影にまで参加していたのです!
 このマリアを演じていたヴェラに激怒したのがハリウッドきっての大スター、イングリッド・バーグマン。「マリアを演じられるのは、このハリウッドで私だけよ」とパラマウント映画会社に掛け合った。そして、「カサブランカ」の撮影が終わるや否や、髪をバッサリとショートにして、「誰が為に鐘は鳴る」を撮影している山麓のロケ地に乗り込み、オーディションにのぞんだ、とイングリッドの自叙伝及び評伝にあります。
 嘘ではあるまい。
 ヴェラが役を外された理由がイングリッド以前との説もあって、山場での足の怪我をおそれたヴェラのへっぴり腰にスタッフが頭を抱えた!というもの。
 踊りの人ですからね。
 どちらにせよ、ハリウッド映画が生んだ最大のバレリーナであるヴェラ・ゾリーナは、こうして伝説となりました。
 今回は1917年1月2日に生まれたヴェラ・ゾリーナを取り上げました。

天野 俊哉




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