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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.92 映画「ブロードウェイ♪ブロードウェイ」と何冊かの本
「ブロードウェイ♪ブロードウェイ〜コーラスラインにかける夢」(10/25公開)は、ダンス関係者にとって「バレエ・リュス」(コラムVol.73)に次ぐ貴重な作品となりました。
映画のチラシを見た時は、今さら「コーラス・ライン」の映画化?と思ったのですが、舞台のオーディションを記録した、とても良く出来たドキュメンタリーでした。
緊迫感が魅力で、オーディションを受けるダンサーと共に、演出家や振付師のインパクトが絶大でした。高良結香さんという日本人ダンサーの存在も興味を引きました。
「コーラス・ライン」という作品に関しては、以前コラムVol.36で押田先生が触れているので、そちらもチェックしてくださいね。
さて映画を観て、私は何冊かの本があった事を思い出したのでその事を。


「ブロードウェイ物語/コーラスラインの舞台裏」
(講談社・1993年・\2,000)

マイケル・ベネットのテープ録音に参加したオリジナル・メンバー達の、反ベネット派の主張を盛り込んだスキャンダル本です。今回の映画でも、録音テーブがそのまま使われているにもかかわらず、彼らへの感謝を込めたクレジットは出ませんでした。
このメンバーの中で、もっとも有名なのがウェイン・シレントです。現在では振付師として大成功している彼ですが、1982年シアター・アプルの柿落とし公演「JACK」では、主役として1ヵ月踊っていました。そのシレントをはじめ、トミー・ウォルシュ、ドナ・マケクニーらの「アイデアを提供した立場の放棄」に関する章からがシビアで、私などは初めて読んだ時、そこで止まってしまったほどです。今回、最後まで読んでみて、これは単なる暴露本ではなく「コーラス・ライン」のスタートからベネットの死までの、完璧なる記録であることを知りました。個人的には、<楽屋の割り振り>の章がとても勉強になりました。

「踊る大紐育/ある日系人ダンサーの生涯」
(晶文社・1995年・\4,900)

高良結香さんよりも、苛酷な時代を生きた日系人ダンサー、ソノ・オーサトの伝記です。
この方のすごい所は、多くの歴史的瞬間をくぐり抜けてきた事。1923年横浜で関東大震災に遭い、その後アメリカに渡り、1929年の世界大恐慌、1941年太平洋戦争。そして踊りでは、あのバレエ・リュス、ブロードウェイ、ハリウッド。1944年ブロードウェイで幕をあけたジェローム・ロビンスの「On the Town」に主演、ハリウッドではMGMミュージカル「The Kissing Bandit」(1948)でフランク・シナトラと共演、プライベートではジーン・ケリー(&ベッツィ・ブレア)夫妻と親しかったという。
こう書くとすごく華やかに見えますが、それはほんの少しで、多く綴られているのは苦労の日々。想像するだけでも恐ろしいですが、日本がアメリカに奇襲攻撃をかけた1941年12月8日、アメリカの観客の前でバレエを踊らなければならなかったという部分はもう、圧倒されます。

「ブロードウェイ 夢と戦いの日々」
(ランダムハウス講談社・2008年・\1,260)

最後は、前述の映画に出演された高良結香さんが書いた本で、最近出版されました。前2冊よりもタイムリーで等身大の読み物ですが、残念だったのは高良さんの写真が1枚も無かった事です。本のカラー帯とタイトル・ページには、“ONE”のスチール写真が載っていて、もちろんその中に彼女も写ってはいますが・・・
まあ、写真を載せなかったのは、出版社側の判断だったのかも知れませんが、一生ラインで終るのでなければ、もっともっと自分を主張してほしかったと思いますね。ソノ・オーサトさんの様にBIGになってほしいものです。

天野 俊哉





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