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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.818 マタドールとヨランダとマイロ
 Y's公演も無事に終了してたまっていたDVD観賞を。その中に1950年代に活躍した映画監督バッド・ベティガーの初期作品集なるものがありました。実は何も知らずに購入したのですが、このベティガー監督の経歴にビックリ。1916年シカゴ(chicacoではない)生まれ。30年代半ばにメキシコに渡りプロの闘牛士に。タイロン・パワー主演の「血と砂」(1941)で闘牛のテクニカル・アドバイザーをしたのが映画界に入るきっかけに。51年、自身の経験を元にした「美女と闘牛士」(1951)を監督し、西部劇を始めとして約40本の映画を手がけた云々とあります。以前にコラムVol.642で「ハリウッド映画のマタドール達」を掲載しましたが、その時に挙げた作品名がズラリですからね。闘牛士が映画監督になり、半世紀以上たって彼の作品がDVDになる事がとても面白いと思いました。もちろん名作ではないし全然知らないタイトルの犯罪ミステリー。
 そしてもうひとつのサプライズが主演女優達でした。1948年の「閉ざされた扉の陰」にはルシル・ブレマーが。そう、フレッド・アステア様の名誉ある歴代パートナーの一人であります。MGMミュージカル大作に次々出演するも、ダンスだけでまるで人気が出なかった。アステアとの「ヨランダと盗賊」では堂々のヒロイン、ヨランダ役を演じるもMGMをクビになり、B級映画会社でやっと出演出来たのがこの作品でした。ミステリアスな演技を淡々とこなしている彼女からはカラー映画でのドレス姿は想像出来ません。
 さらに1944年の「霧の中の逃走」でのミステリアスな美人はまさかのニナ・フォック。MGMミュージカル「巴里のアメリカ人」で画家の卵ジーン・ケリーを援助する有閑マダム、マイロ・ロバーツ役のあの女優さんです。こちらは無名時代ながらチープな作品に光を当てる魅力を既にそなえています。実力の違いがはっきり。ニナ・フォックだけで作品は引っ張っていると言っても過言ではありません。
 さまざなサプライズがあり作品そのものよりもオマケのライナーノートの方が100倍楽しめました。
写真 左から縦列ごとにバッド・ベティガー、ルシル・ブレマー、ニナ・フォック

天野 俊哉




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