ジャズダンス, タップダンス, JazzDance, TapDance

Vol.1753 突然送られてきた来たミュージカル映画のDVD

　ある日の事、我が家に謎の小包が送られてきました。紙ではなくてグレーのビニールみたいな包みというのが怪しい。家人は「中国からの白い粉では？」と言いますが、送り主の住所はアメリカのニュージャージー州。知らない会社名が印刷されてますが、爆発物ではなかろう！と信じてハサミでビニールを切り、恐る恐る中を覗くとケースが、そうDVDケースがありました。パッケージには『RECKLESS AGE』と映画のタイトルが印刷されてます。もう何年も前にパソコンで注文したのですが、引き落としも無かったのでエラーしたのかと諦めた商品です。今回特に手紙もメール連絡もありませんが、そのDVDと共におまけのDVDが付いてる事からあちらのミスで何年も忘れ去られた商品と理解しました。

　1990年代初めにアメリカのタップ・ダンサー、ラスティ・フランク女史がアメリカのタップのレジェンド達にインタビューを試みた『TAP』という名著があり、その巻末にタップ・ダンサーが1920年代末から1955年までに出演したハリウッドのミュージカル映画のリストがあります。10年ほど前に何百本もあるそれらのミュージカル映画を「全部観てやろう！」と決意してDVDを販売しているアメリカの個人のコレクター達と取引を始めたのです。こうした販売は違法なのでもっともらしい会社名がつけられていました。運が良かったのは、200作品位取引しましたが、いい加減な出品者がいなくて100％の確率で敏速に商品が送られて来たことです。

　今回送られてきた『RECKLESS AGE』は、有名なタップ・チーム、ニコラス・ブラザーズの弟さんハロルド・ニコラスが一人でゲスト出演してタップを披露した1944年のユニヴァーサル作品。主演は2018年の夏に亡くなったハリウッドの少女ミュージカル・スターのグロリア・ジーン（追悼コラムVol.1546をご参照）。ユニヴァーサル映画には既にディアナ・ダービンという先輩少女歌手がおり、ディアナの主演作品はお金をかけたA級作品、グロリアの主演作品はお金をかけないB級作品という決まりごとが存在していました。つまりグロリア主演作品の多くは上映時間がたったの60分前後。ちなみに監督のフェリックス・E・フェイストはディアナの当時の旦那さんという辺りが皮肉です。
　大富豪の娘グロリアはまだまだ若いのにまわりは年寄りばかりで息苦しい。家出して大都会のニューヨークに。「つまらない映画だな」とアクビをしているとゲストのヴォーカル・グループのデルタ・リズム・ボーイズが急に現れて歌いだします。やがてグロリアはデパートに雇われますが、デパートの店員仲間として登場するのがマーシャル・トンプソン、ナイトクラブ芸人のジャック・ギルフォード（眠気を冷ます顔面演技が見事）とユニヴァーサル映画のB級コメディエンヌのジュディ・クラーク（ジャジーなナンバーをベティ・ハットンっぽく歌い踊る）。そして、閉店後の売り場に引越屋さんとして登場するのがもうひとりのゲスト、ハロルド・ニコラスです。つなぎの労働服を着たハロルドはカルメン・ミランダのラテン・ソングをたっぷり歌います、そして広いデパートのフロアでステップを踏みまくる！脚立の天辺からバック宙で床にスピリッツで着地をしたり、アクロバティックな動きを含めたスピーディーな振付が楽しくてアンコールしたいくらいでした。長年ブラザーズとして踊ってきたせいか、ハロルドのソロを私は今まで過小評価してきましたが、この作品のタップ・ナンバーは素晴らしいです。グロリアのクラシカルなナンバーは少なかったですがとても楽しいミュージカルでした。

　おまけとして頂いたDVDには『TOPPER』とあります。メニューには『TOPPER』の何たらと4つのタイトルがならんでいます。テレビ・シリーズみたいで、主演はアン・ジェファリーズです。つい最近、『もうすぐ生誕100年』コラム（Vol.1725）を打ったばかり。まさか私がアン・ジェファリーズに興味がある事を知って送ってくれたなんて？ありえませんよね。自分が書いたコラムの一番下に今回入手したテレビ・シリーズ『TOPPER』のポートレート写真を2枚掲載しています。ロバート・スターリングというハンサムな男優とアンのツーショット写真とその隣のセントバーナードのワンコを挟んでいるのが『TOPPER』の主要キャストの方々。という事はこのワンコが登場するという訳だ！絶対に観なければ。

天野俊哉