ジャズダンス, タップダンス, JazzDance, TapDance

Vol.1727 もうすぐ生誕100年レスリー・ブルックス～リタと共に

　いよいよ1922年7月13日生まれのレスリー・ブルックスの登場です。
　知らないなぁ～。
　皆さまの呆れ顔が目に浮かびます。
　そうですね、私のまわりの古いミュージカル・ファンも誰も知らないです。レスりーはダンサー体形で、背が高くて、顔が小さいのが特徴です。

　レスりーは1941年に自由の女神像のトレードマークで知られるコロムビア映画と契約しました。やがてセリフや役をもらいましたが、コロムビア映画にはすでにリタ・ヘイワースという大スターがいたので出世は出来ず、1948年に引退するまでリタの側近に徹しました。170㎝以上の長身とスレンダーな体形が2人とも凄く似ていてカメラの前に立った時のバランスが良かったのです。さっそく自宅にあるレスりーの映画DVDをチェックしてみました。

『晴れて今宵は』（1942）
　リタ・ヘイワースとフレッド・アステア主演。ジェローム・カーン作詞・作曲の甘美なメロディが記憶に残るロマンティックなミュージカル。アステアは映画が始まって40分たたないとタップを踏まない信じられない作品。レスりーはリタの妹役で、もう一人の妹役アデル・マーラなる方とダブルの扱い。出番もセリフもほとんど一緒でしたが、ミュージカル・ナンバーはありませんでした。

『カバー・ガール』（1944）
　リタ・ヘイワースとジーン・ケリー主演のテクニカラーのミュージカル。当時の有名雑誌のカバー・ガール12名が顔を揃える豪華版。コスモポリタン誌をはじめ全てのファッション誌に女性モデルと共に兵隊や星条旗が写っているのに驚きました。リタとレスりーはジーン・ケリーが経営するブルックリンの小さなクラブのコーラスガール。共に夢はブロードウェイのダンサー。野心家のレスりーが雑誌のカバー・ガールに応募した事から騒動が起きる、みたいなお話でした。作品の前半はレスりーの場面が多くて、彼女のスタイルの良さや美貌が強調された展開になってます。ただリタに意地悪をするイヤな女の役なので笑顔よりもきつい表情が多かったです。

★ミュージカル・ナンバー
“The Show Must Go On”
　ジーン・ケリーのクラブの狭いステージで8人のコーラスガールが歌ってタップを踏む。スタイルではリタに負けてないのに踊り始めるとアッサリ喰われてしまう。8人をバランスよく見せる辺りがこの映画の面白いところ。
“Who's Complaining”
　アクの強いお笑いスター、フィル・シルヴァースが4人のコーラス・ガールを品定めするショー・ナンバー。レスりーはフィルをふってしまうハイソな娘を。セクシーなタクシー運転手役のリタを4分の1扱いで見せるのが面白い。ただしリタがコーラスガールの一員なのはここまで。
“Put Me to the Test”
　雑誌のカバー・ガールに選ばれスターになったリタとジーン・ケリーの華やかなデュエット・ナンバー。前半ジーン・ケリーにコーラスガールが一人づつ絡みますが長いドレスのレスりーだけは踊らず、ジーン・ケリーと短いタップ・デュエットをする赤い衣裳の女性が一昨年前に亡くなったミリアム・ネルソン（コラムVol.1533をご参照）。リタをはじめ女性全員がジーン・ケリーよりも背が高いので彼が頑張って背伸びをしているのが笑える！

『今宵よ永遠に』（1945）
　リタ・ヘイワースと『カバーガール』のリー・ボウマンが主演の戦時下のイギリスを舞台にしたミュージカル。リタの相棒役に歌手のジャネット・ブレアが選ばれました。彼女達が所属するミュージカル劇団のメンバーにレスりーがいるのですが役が小さくてセリフも少しだけ、ダンス・ナンバーにレスりーはおりません。このメンバーの中には後のスター、シェリー・ウインタース（コラムVol.1617をご参照）の顔が見えます。タイトルに名前も出ないセリフも無い本当の脇役ながら常にリタの側にいたり、カメラに入ろうとする前向きさが面白くて映画の途中からはシェリーを追ってしまいました。やっぱりレスりーはスターになる意欲がなかったのかな？

『Cigarette Girl』（1947）

　コロムビア映画の67分のB級ミュージカル。やっとタイトルの一番にレスりーの名前が出ましたがスタッフもキャストも知らない人ばかり。わずかにスイート・ジャズのラス・モーガン楽団だけが知られてる程度。ナイトクラブのシガレット・ガールを演じ、歌い、恋をする主役らしさはあれど作品があまりにチープすぎて気の毒です。

　レスリー・ブルックスは1940年代に映画界から足を洗い堅気になり家庭にも恵まれ2011年に亡くなりました。

天野俊哉