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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.769 トーマス・ハーディーの想いで
 今回は18世紀のイギリスの作家であり詩人トーマス・ハーディーを取り上げます。
 そうですか、Y'sコラムもついにイギリス文学の世界に来ましたか。
 大学1年の学期末試験での事。当然、試験勉強なんかしていない。
 英語の試験前に怪情報が。「テスト用紙の最後に、私はどうしても先生の英語で優を頂きたいのですが!」って書くと良いらしい。「それで貰えるのか?優が」と誰か。「試験後に電話がくるらしい」「話がうますぎないか?」と誰か。「買わされるんだよ。教授の著書を」「いくら?」「5千円」。
 結局このうまい話に乗ったIHTそして私の4人はテスト用紙の最後にお願いの一言を書いて提出、後日筋書き通り教授から直々にお電話を頂き、お宅まで出掛けて行く事に。
 池袋駅前からバスに乗って凄い田畑が拡がる風景の中に教授のお宅がありました。
 教授と奥様(お爺ちゃんお婆ちゃんの年代)に迎えられた我々は縁側でみかんを頂きながら談話などをしていましたが、皆心のなかでは《どのタイミングで売買が始まるのか?》心配していました。
 なんせ、田畑が拡がるロケーションですよ。一見のどかじゃないですか。
 話の途中でふと「君達は本で勉強したいそうだねぇ」とお爺ちゃん、いや教授からやんわりお言葉が。そばではお婆ちゃん、いや奥様がニコニコと見守っていらっしゃる(映画「ハウス」の南田洋子さんの怖い笑顔(コラムVol.131をご参照)を思い出した)。
 皆に緊張が走ります。このタイミングを逃したら、ここまで来た意味がない。私はすかさず「先生の書かれた著書を買わせて下さい!」と切り出しました。
 奥様がスッと立ち上がり引っ込まれました。
 替わりにドスを持った若衆が雪崩れ込んでくる!はずがない。
 奥様が本を4冊持ってこられて教授に。私達は一人ずつ5千円を手渡し、教授から本を頂きました。教授が専門とされるトーマス・ハーディーの研究書でした。
 私達は礼を言って引き上げました。研究書の方はページを開くこともなく、そのまま本棚行きとなりました。
 そして、忘れもしない3月のある日、私達は間違いなく教授から《優》を頂いた成績表を見ていました。単純に喜ぶ中、何故かHだけが浮かない顔を。成績表を覗きこんだ他の3人はたまげました。
 なぜか彼だけ《可》だったのです。
 「どうしてですか?」と教授に聞くわけにもいかないし、「みかんの食べ方が悪かったんだよ」とか「あの家は幻だったのかも」と、まあHには悪いけどかなり長いことこのネタで笑わせてもらいました。
 数年してナスターシャ・キンスキー主演の映画「テス」が日本で公開されました。「テス」はトーマス・ハーディーの代表作です。
 私は教授から5千円で買った研究書を思い出し、中を見てびっくり。
 これ、著書とは言っても、ハーディーの著書のリスト、つまり研究者にとっての辞書みたいなものだったのです。
 知らない本のタイトルと出版社がダラダラ並んでいるだけで読める部分が全くありませんでした。しかもこの教授、日大の教授ではなく某大学からの客員教授だったのです。
 まっ、いいけど。
 実はミハイル・バリシニコフとグレゴリー・ハインズ主演の「ホワイトナイツ」のDVDを持っていない事に気づき、昨日ディスク・ユニオンのお店を探していた時に、たまたま「テス」のDVDが目に入り、今回の懐かしい出来事を思い出した!というだけの話でして。
 お付き合い頂きありがとうございました。

天野 俊哉




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