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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.217 アメリカ映画に出てきた「タップ馬鹿」のはなし
 アメリカの戯曲作家に、ウィリアム・サローヤンという人がいます。今の日本では、彼の作品は入手困難ですが、古本屋では代表作でもある「ヒューマン・コメディ」を時たま見かけます。サローヤンが1939年にピューリッツァー賞を受賞したのに、辞退してしまったという、「わが人生の時」“Time of Your Life”の映画版をDVDで観ました。
 このコラムでたびたび取り上げるジェームズ・キャグニー(コラムVol.66をご参照)が、1948年に制作し主演した作品です。サンフランシスコの安酒場を舞台にした人間模様であり、残念ながら映画としての魅力には欠けます。信じがたいことに、この酒場でタップを踏み続ける若者というのが登場します。台詞を言いながらステップを踏むのは、グレゴリー・ハインズが最初だと思っていたら、40年も前に先輩が存在したことになります。1930年代にクラシック音楽に合わせてタップを踏むダンサーとして知られた、ポール・ドレイパーその人です。1935年のワーナー映画「コリーン」など、いくつか映画を観ましたが、いかにも神経質そうなイメージが強く、どうも感情移入ができませんでした。
 さて、それまでのイメージとはまるで違う普通の青年として登場するドレイパー氏は、加藤忠君のように実に気持ちよさそうに、ストイックにステップを踏みまくるのです。とても幸せそうです。
 後日、古本市で入手した「ウィリアム・サローヤン戯曲集」には、1939年にブロードウエイで上演されたと記録されており、ポール・ドレイパーの演じたハリーの役を映画デビュー以前のジーン・ケリーが演じたとあります。ジーン・ケリーの演じているステージ写真を、是非見てみたいものです。

天野 俊哉





















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