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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1886 宝塚歌劇宙組公演(2021年9月)
 現在YouTubeでは過去の宝塚歌劇の公演の、それも完全版を観ることが出来るのはオールド・ファンとしては嬉しいばかり。中には『アントロジェニー』『会議は踊る』『ザ・ショーケース』などテレビ放送されなかった作品まであるのは驚きです。かつて《劇団ビデオ》といって宝塚歌劇団が記録用に残した映像がファンの間で出回ってましたが、現在のYouTube映像が《劇団ビデオ》なのか、熱烈なファンによる《隠し撮り映像》なのかは全く判別出来ません。

 さて、『アナスタシア』等の大作を経て真風涼帆さん率いる宝塚宙組のお芝居とレヴューの2本立て公演が東京にやって参りました。トップ娘役が星風まどかさんから潤花さんに代わり新たなトップコンビのお披露目にもなりました。
 お芝居は生田大和作・演出
 『Musical シャーロック・ホームズ The Games Is Afmot』
 タイトルの“The Games Is Afmot”はさあ!犯人を追いかけるぞ!という意味。
 真風涼帆さん演ずるシャーロック・ホームズに、ただ一人シャーロックの心を動かした女役の潤花さん、宿敵ジェームズ・モリアーティ教授役の芹香斗亜さんが絡むサスペンスですが、あくまで宝塚調で分かり易く何度観劇しても楽しめる様に創られています。新しい娘役の潤花さんは早速ヅカファンから「じゅんちゃん、真風さんとの相性が最高!」とお墨付きを頂けたようです。芹香さんは真風さんと対等に渡り合える魅力があるのと“いい人キャラ”が敵役に華を持たせました。このお二人、かつての大浦みずきさんと朝香じゅんさんを思わせる大型コンビですね。
 全編のほとんど、バックが暗いのは霧のロンドンを舞台にしているせいか?それとも2部のレヴューとのバランスなのかは分かりません。ただ、思い切ったミュージカル・ナンバーがラストに急に出て来て盆は回すわ、セリは上下させるは、霧のロンドンを忘れさせる位音楽のアレンジがゴージャスなのでびっくり。生田氏のショー作品、レヴュー作品デビューを首を長くしてお待ちしております。

 さて、お待ちかね野口幸作/作・演出
 『タカラヅカ・スペクタキュラーDelicieux!デリシュー〜甘美なる巴里〜』
 不思議な事ですが、私は今まで野口幸作氏が演出した
 『THE ENTERTAINER』(2016年星組)
 『Super Voyager』(2017年雪組)
 『BEAUTIFUL GARDEN』(2018年花組)
等のレヴュー作品を劇場で観た時、オープニングを見終わった瞬間に「よし、このDVDを買うぞ!」と決めているのです。何という演出力!
 もちろん今回もですが、10分近くあるオープニングがあまりに盛り沢山すぎて劇場を出るときには音楽とか、衣裳とか、装置とか、細かい部分を覚えていないのです。真風さんが3回衣裳を替えた事、真風さんがゴンドラで下りてきた、大階段まで使ったフレンチ・カンカンがパワフルだった!最後のラインナップでスターの皆さんが手に電飾のスイーツを持っていて、観客席の皆さんも同じスイーツを持って一緒に盛り上がっていた!
 記憶を辿るもそれくらいです。真風さんから脇役の皆さんまでほぼ全員が舞台と舞台裏を走り回っているに違いありません。お目々が2つでは追いきれないあたり松本晋一さんの振付作品といい勝負ですね。

 野口氏は他の演出家以上に振付スタッフに細かい指示を出しているのでは無いでしょうか?“オープニング・ナンバー”及び芹香斗亜さんが大柄なマリー・アントワネットを演じる“王妃のお茶会”の振付にミュージカル等のドラマ絡みの振付が上手い麻咲梨乃氏を起用して成功しています。その逆に野口氏の演出が振付やダンサーよりもインパクトがあり過ぎて残念な結果になることもあります。
 デコレーション・ケーキ風の豪華なセットを造ってレヴューの効果を最大限に出そうとした“ロケット”のナンバーでの振付はもうひとひねり欲しかったです。ただ、これも私が舞台空間全体を2階席から見下ろしていたらデコレーション・ケーキがクルクル回って本物のケーキに見えること、ダンサーのフォーメーションを追える事で感動が倍増したのかも知れません。

 全編に渡って登場するマカロンからモンブラン、アイスクリームに至るスイーツの小道具を見ながら『2017年の東京リズム劇場』で演出の松本晋一さんが発泡スチロールや画用紙等で手作りしたスイーツの数々を思い出してしまいました。舞台にスイーツが登場するとついついスイーツの方に気を取られてしまい、誰が持っているのかを忘れてしまうのですね。でも、お金をかけた宝塚のスイーツより松本さんが作ったスイーツのが全然美味しそうでしたし、ケーキを頭に被るなんて松本さん以外の人では考えつかないアイデアでしょうね(コラムVol.1215をご参照)。

 大階段を使ったフィナーレはヅカファンが見たい物満載でした。芹香さんとピンクのロングドレスを着た娘役さん達が絡む大人のムード。羽山紀代美氏振付の真風さんを中心とした男役さんの黒燕尾服のタンゴでは全ての男役同士が組むアイデアが流石です。あいさつでは全員が手に白い羽根扇を持ってゴージャスに。

 真風さん率いる宙組は和央ようかさんのサヨナラ公演だった大作『NEVER SAY GOODBYE』、演目が演目だけに世代交代の噂が出ていますが宙組の皆さんには最後まで熱く駆け抜けて頂きたいですね。

天野 俊哉



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