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Vol.1809 もうすぐ生誕100年ローレン・バコール〜ハードボイルドな女として
 1924年生まれのハリウッド女優ローレン・バコールについては2014年に90歳で亡くなった時に追悼コラム(Vol.672)を書いております。それを読むと彼女が書いた自叙伝『私一人』を皆さまにオススメしており、今回久々に読み返そうとしたのですがまるで見当たらないのです。ネット通販で購入して読み返えせば同じ様な内容になってしまうと思いましたので、あくまで映画女優としてのローレン・バコールに焦点を当ててみたい、と思います。

『脱出』(1944)
 1943年、映画監督のハワード・ホークスがワーナー映画でハンフリー・ボガート主演の第2の『カサブランカ』の製作を任されます。
 ホークス監督はヘミングウェイ原作の『持つと持たざるもの』を選び製作に乗り出しました。ホークスはファッション・モデルで19歳のローレン・バコールをスカウトし、犯罪映画向きのハードボイルドな女に育てます。小さな船の船長ボガートと港町の酒場に歌手として雇われたベティのやり取りが当時としては斬新、煙草をスパスパやり、ハスキーな声で話し、黙って男を見つめるバコールが最高にイカします。しかしこれはバコールの演技力ではなくホークス監督の演出です。
 長いことバコールの歌声は男性歌手アンディ・ウィリアムス録音の物とされてましたが、しっかり自分で歌っているそうです。

『三つ数えろ』(1945)
 レイモンド・チャンドラー原作の探偵小説の映画化。ハンフリー・ボガートが演じる探偵フィリップ・マーロウが素敵です。ワーナーは『脱出』の大ヒットで人気急上昇のバコールの出演場面を増やしました。現在発売されているDVDにはオリジナル版とバコール出演場面増量版の2種類が収録されてます。この頃本当の夫婦になったボガートとバコールの相性の良さがあちらこちらに散りばめられてます。ただ、何回観てもわかりずらい作品でもう最後にしたいと思いました。

『潜行者』(1947)
 ボガートとバコールの名コンビゆえ何とか観られますが、ホークス監督から離れたバコールの魅力がどこにあるのか?結論は見出だせませんでした。スイング・ジャズが好きな若い女性という等身大のアメリカ女性を演じました。

『キー・ラーゴ』(1948)
 中学生の頃観たきりのジョン・ヒューストン監督のギャング映画。ボガートにエドワード・G・ロビンソン、ライオネル・バリモア、クレア・トレヴァーら達者な俳優に囲まれたバコールは手も足も出ず。彼女が着ている白いシャツ、着た切り雀の衣裳姿のみ記憶に残ってます。

『情熱の狂想曲』(1949)
 バコールがハリウッドの大物プロデューサー、ハル・ウォリスに推薦してハリウッド映画デビュー出来たのがカーク・ダグラスです。カーク演じる主人公は伝説のトランペッター、ビックス・バイダーベックをモデルにしてるそうですが、トランペットの吹替えはハリー・ジェームズだし、雇われているのが一流ナイトクラブなんてきれいごと過ぎてあまり好きな作品ではありません。しかも教養の無いカークを翻弄するのがバコール。大人びた雰囲気だけはあるのですが彼女の演技力に不安があり、彼女が出てくる場面が凄く退屈に思えました。もう一人のヒロイン、歌手のドリス・デイに全てをもって行かれました。

『百万長者と結婚する方法』(1953)
 中学生の時以来の鑑賞です。まずタイトルのビリングが
 ベティ・グレイブル
 マリリン・モンロー
 ローレン・バコール
であることに驚きました。
 女性3人が並ぶスチル写真を見ると長身のバコールが必ずセンターなのでビリングも最初かとずっと信じきっておりました。しかも出演場面も話のウェイトもバコールがメインです。1940年代のFOXの女王ベティ・グレイブルと50年代のFOXの女王マリリン・モンローが助演レベルに落ち着いているのは何故なのか?不思議でなりません。
 マリリン・モンローの評伝によるとバコールは遅刻癖のあるマリリンが嫌いで最初から2人の相性は悪かったものの、ボガートとバコールの子供たちがマリリンにとてもよくなついてから態度を変え親しくなったとあります。

『ニューヨークの女たち』(1954)
 脚本も監督も3人の女優競演も先の『百万長者と結婚する方法』と同じです。確か日本劇場未公開作品ですが中学生の頃テレビで観ました。
 ジューン・アリスン
 ローレン・バコール
 アーリン・ダール
 対する男優は
 ヴァン・ヘフリン
 フレッド・マクマレー
 コーネル・ワイルド
ら主役級が集められました。私が学生時代に付けていた映画メモによると「謎解きゲームの様な展開が成功してる!」とありますがバコールには全く触れておりません。

『風と共に散る』(1956)
 メロドラマの巨匠として近年クローズ・アップされまくっているダグラス・サーク監督のどうやら最高傑作?わたくしこの監督をあまり認めてないので。
 ロック・ハドソン
 ローレン・バコール
 ロバート・スタック
 ドロシー・マローン
のダグラス・サーク監督のお気に入り4人がメイン・キャスト。バコールよりも遥かに長身であるロック・ハドソンとのバランスは最高です。またハドソンの低い声がバコールのハスキーな声といい感じで大人っぽいムードを醸し出しています。バコールにとってはハンフリー・ボガートを除くとロック・ハドソンが一番ピッタリだと私は思いました。

 長いこと映画女優として活躍したローレン・バコールなのに私が観たのはここまでです。ファッション・モデル出身ゆえスタイルは抜群ですが、バコールのデビュー作『脱出』でハワード・ホークス監督によって作られたハスキー・ボイスとハードボイルドなイメージはその後の活躍の場を狭めたのでは無いでしょうか?
 今後は1960年代以降の出演作品も少しずつ観てゆきたいと思います。

天野 俊哉



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