ジャズダンス, タップダンス, JazzDance, TapDance

Vol.1751 ゴールド・ディガーズ36年～DVD情報

　コズミック出版が「DVD1枚あたり￥180ですぜ」と安さをアピールするなか相変わらず税込￥5040という強気の姿勢を貫いているのが業界の古株ジュネス企画のDVDシリーズであります。

　1930年代のワーナー映画のレヴュー・ミュージカル『ゴールド・ディガーズ』シリーズの第2弾が今回ご紹介する『ゴールド・ディガーズ36年』です。
　原題が“Gold Diggers of 1935”なのにどうして日本でのタイトルが『36年』なの？と思われるかたも多いようなのですが、日本で公開されたのが1935年の暮れだったから、と重木昭信氏の著書『ミュージカル映画事典』（平凡社2016）に説明があります。
　『四十二番街』（1933）
　『ゴールド・ディガーズ1933』（1933）
　『フットライト・パレード』（1933）
と次々ワーナー映画で大ヒット作品を連発してきたバスビー・バークレーがレヴュー場面に加えドラマの部分の監督まで担当したのがこの『36年』です。
　ただし、ワーナー・ミュージカルのレギュラーである歌手のディック・パウエルの相手役に歌も踊りもダメな女優のグロリア・スチュアートをキャスティングしてしまったのはミュージカルとしていかがなものか？
　グロリアさん、とても綺麗な方で1930年代のミュージカル映画のあちこちに顔を見せてましたが、60年後にレオナルド・ディカプリオ主演の名作『タイタニック』の一番最初の場面に登場して話題に、さらに100歳まで生きて100歳で亡くなった！という凄いキャリアのお方。

　では以下、ミュージカル・ナンバーのご紹介です。いずれもアル・ダビンとハリー・ウォーレンの新曲が3つ。
“I'm Going Shopping With You”
　せっかくのディック・パウエルとグロリア・スチュアートのお洒落な買い物デート場面なのにバークレーらしい展開が見られません。ごく普通の歌いりデート・ナンバー程度。
　逆に映画のオープニング、舞台となるホテルの朝、ホテルマン達が1日の準備をする何気ない場面にバークレーらしい冴えが見られました。

“The Words Are In My Heart”
　夜のデート場面でディック・パウエルがグロリア・スチュアートに歌いかけます。
　そして、映画の後半にも同じ曲が登場して凄いレヴュー場面が展開します。
　白いドレスの女性が白いグランドピアノを弾くのですが、そのピアノが自在に動き回り様々な形を作り出しレヴューが展開するのです。まだCGが存在しない時代によくここまで撮影出来たもの。ところが今回、このコラムの為に比較的クリアな画像でこのナンバーをよーく見ると、何とクルクル回るグランド・ピアノの下に人間の足を確認したのです。つまり、背中にピアノを乗せて振付通りに何人もの黒子が動いていた訳です。実にアナログな演出じゃありませんか？凄いぜバスビー・バークレー監督。

“Lullaby of Broadway”
　そしてフィナーレを飾るのが100名近い男女タップ・ダンサーによるタップ・ダンス・ナンバー。真っ暗闇にウィニフレッド・ショウという主題歌を歌う女性の顔が近づいてきます。やがて画面一杯に顔が埋まり、見せ場のタップに行くまで10分近くドラマティックな場面が展開するのですが、ニューヨークの匂いがプンプンする演出です。アール・デコ調の装置も魅力。30年ぶりに全体を観ましたが起承転結の構成が見事ですし、物凄く広いダンス・フロアに先ずラテンダンスのペアがエキゾチックに踊り、やがてそのラテンダンサーが男性タップ・ダンサーと女性タップ・ダンサーをフロアに誘い込む流れが興奮させてくれます。
　比較的分かりやすいステップで振付されたタップダンスですが、ウイング・ステップ等技を見せる時は透明の板の下からステップを踏む靴底を映したりカメラが際どすぎてたまげます。

　大きな画面で見てみたい名タップダンスのナンバーです。残念なのはこのナンバーのヒロインがグロリア・スチュアートでないことでした。
　さらに25年後にこのアカデミー主題歌賞を受賞した“Lullaby of Broadway”のタイトルで、しかもドリス・デイとタップダンサーのジーン・ネルソン主演でミュージカル化され、素晴らしいタップダンス・ミュージカルになりました。
　『ゴールド・ディガーズ36年』は9月25日ジュネス企画より発売中です。

天野俊哉