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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1672 宝塚花組トップスター明日海りおさんサヨナラ公演
 宝塚歌劇団花組トップスター明日海りおさんの退団公演に行ってきました。

 明日海さんは2003年に宝塚歌劇団に入団した89期生、当時タップダンスの個人指導をしていた娘役さんが89期生でしたので同期の明日海さんは何かと思い入れのある方です。
 紫吹淳さん率いる2003年春の月組公演『花の宝塚風土記』『シニョール・ドンファン』で初舞台の後、月組に配属されました。
 早くから上級生の龍真咲さんとコンビの様に扱われていましたが、その龍真咲さんが月組トップスターに就任したお披露目公演『ロミオとジュリエット』で明日海さんにまさかの試練が。宝塚では話題作りや集客を上げる為によく行う《役替わり》をこの『ロミオとジュリエット』で、しかも主役のロミオ役と敵役のティボルト役をトップスターの龍真咲さんと2番手の明日海さんで組んでしまったのです。
 どう思いますか?これって。酷い企画ですよね。嫌味ですよね。
 Y'sが『ナショナル・タップ・デー』に出演した時にリーダーの淺野康子さんではなく下っ端タップダンサーの天野がセンターで踊る、みたいな状況ですから。
 私はこうした《役替わり》を全く知らずに龍真咲さんトップお披露目の『ロミオとジュリエット』を観に行き、その日が明日海さんがロミオを演じる初日である事を場内で知りました。というのも場内には普段見られる高陽感はまるで無くて、ピーンとはりつめた空気に包まれていましたからです。ご一緒した宝塚通の方によると、こうした《役替わり》の一方の初日にはトップさんと2番手さんのファンがほぼ全員着席して見守るもの、だそうです。
 コワッ!
 特に2番手さんのファンはトップさんのファンに遠慮して小さくなっているらしいのです。
 だから静かなのかい?
 2000人入る劇場があんなに静かだったのは花組のトップスターだった匠ひびきさんが病気休演して2番手の春野寿美礼さんが代役をつとめた時以来でした。

 その日の『ロミオとジュリエット』は当然の事ながらトップさんが早くに殺されてゆく消化不良な雰囲気のまま本編のお芝居が終わりましたが、ショータイムになると一気に立場が逆転、ロミオだった明日海さんは2番手に戻りましたが、それまでの重圧から解放されたからか?物凄く弾けてました。そして龍真咲さんは本来のトップに返り咲き、当然の事ながら大きな羽根を背負って最後に大階段を降りてきました。私の隣に座っていたご婦人はこのシステムが理解出来てなかったと見えてセンターに立つ龍真咲さんを見て「あれは誰?」と横にいたご友人に聞いていました。この次の公演『ベルサイユのばら』でも同じ《役替わり》で上演したのですが、流石にこの時は恐くて観に行けませんでした。

 やがて明日海さんは蘭寿とむさん率いる花組に異動になります。どちらかというと演技派の明日海さんがダンスの花組で大丈夫なのかな?と大いに心配したものです。蘭寿とむさん時代の花組はやや集客に苦戦していた、と私は見てました(コラムVol.314をご参照)が、どうでしょう?明日海さんの存在は一瞬で花組全体を華やかにしてしまいました。『愛と革命の詩〜アンドレア・シェニエ』における明日海さんの敵役は見事でした。そのタイミングで再び花組公演はチケット入手の難しい状態になってしまいました。そして2014年、蘭寿さんのあとを次いで『エリザベート』で花組のトップスターに就任しました。その『エリザベート』は持っておりませんが、我が家の棚にある明日海さんの花組に来てからのDVDコレクションはなかなか充実しております。それだけレヴュー作品やショー作品に恵まれた、という事なのでしょうね。

 今回のサヨナラ公演は明日海さんとは何かと縁のある植田景子氏作・演出の『ミュージカルA Fairy Tale-青い薔薇の精-』。最初、明日海さんがフェアリーなんて当たり前すぎて『歌劇』誌の座談会すら読まずに着席してしまったのですが、劇が進行してゆくにつれ近年まれに見るグッと来てしまう演出にただただ感動してしまいました。明日海さんと一緒に常に8名程の仲間達が舞台に登場するのも植田氏らしい思いやり。新しいトップ娘役に幅広い年齢を演じさせた事も良かったと思いました。出来ればもう一度じっくり鑑賞したかったです。
 そして稲葉太地氏作演出の『レヴューロマン/シャルム!』は地下都市を舞台にしたエキゾチックなレヴュー。幕開きからワクワクさせるのですが、当然の事ながら明日海さんのサヨナラを意識した流れになってゆくのは仕方ないか?地下都市みたいな稲葉氏の素敵なアイデアをまた別の機会にじっくり拝見したい、と思いました。クラシカルな舞踏会の場面とスタイリッシュに決めたタンゴのナンバーが好きでした。ANJU氏振付のフィナーレの男役さんの黒燕尾服の場面で明日海さんと下級生達が一人一人絡んでゆく振りが懐かしい。羽根を背負って大階段をおりてくる明日海りおさん、ああ最後なんだなぁ〜さみしいです。

 くどいようですが私は宝塚を卒業した方の舞台はなるべく観ないように生きているイケない人間なので明日海りおさんともこれでお別れです。
 長い間お疲れ様でした。

天野 俊哉



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