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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1619 アルフレッド・ハウゼ楽団のタンゴ・コンサート
 両親がタンゴのファンだったので、子供の頃から自宅でタンゴのレコードをよく聴かされていました。アルフレッド・ハウゼ楽団やエドモンド・ロス楽団のレコードでした。
 そして、映画ファンになってからはタンゴの音楽やダンスが登場する映画に注目する様に。シャルル・ボワイエとジーン・アーサーが豪華客船で“ラ・クンパルシータ”を踊る『歴史は夜作られる』、ビング・クロスビーがジョーン・フォンテーン相手に“奥様お手をどうぞ”を甘く歌いかける『皇帝円舞曲』etc.
 不思議とタンゴの音楽でタップを踏むチャンスは無かったものの、アルゼンチン・タンゴの故井上てつひこ先生(コラムVol.43をご参照)率いる黒猫座公演『情熱のタンゴ』に淺野康子さんとタップ・ダンサーとして2000年から4年間もゲスト出演していましたので、生の演奏でタンゴをたっぷり堪能させていただきました。舞台も狭いので小編成による演奏でしたが、浅草橋にあるアドリブ小劇場での公演に出演された《岩崎浤之とタンゴコスモス》のヴァイオリニスト小林美和子さんの“ジェラシー”があまりにも素晴らしいので、CDを衝動買いしてしまったほどです。

 さて本題です!
 やっとですかい?
 6月の暑い日にすみだトリフォニーホールで開催された『アルフレッド・ハウゼ タンゴ・オーケストラ コンサート2019』にタンゴ・ファンの父の代役で行って参りました。何の予備知識もないままの鑑賞ゆえドキドキワクワクでした。
 まず、すみだトリフォニーホールが何処にあるのかを知らない。
 調べると、私の地元でもある錦糸町駅の、北口を出て左に、東武ホテルレバント東京の横にあるらしい!
 なるほど。
 近い、近すぎる!
 遅刻しないように気をつけなければ!
 案の定、着席をしたのが開演5分前でした。
 クラシックのコンサート会場らしく木の造りがゴージャス。やや、というよりかなり年齢層の高い観客層が平日昼間の¥8800の座席をめちゃ埋めていました。
 リーダーのアルフレッド・ハウゼはとっくに故人ゆえ、今回はあとを継いだ方なのでしょうが、お名前が分からないのでこのコラムでは《アルゼさん》と呼びましょう。
 客席から見て左側がストリングスの方々、ヴァイオリンとヴィオラで15人、チェロが2人の計17人。センターがリズム・セクションの方々、ドラム・ピアノ・ギターにエレキ・ベースの計4人。右側には、アコーデオン3人、トランペット(とクラリネットのもちかえ)2人、フルート2人、マリンバ1人の計8人。
 29人+アルゼさんという大所帯が舞台上にズラーッと並んだ姿は実に豪華です。

 オープニングは黒猫座のタンゴ公演でも度々登場した“オレ・グアッパ”と“淡き光に”からスタート。クラシック以外のコンサートで17人がいっせいに弦を動かす姿には圧倒、聴こえてくる音はもうレコードだCDだのレベルではありませんね。流麗華麗という言葉がピッタリのストリングス・サウンド!さて、颯爽と2曲も指揮をしたアルゼさん、譜面台のメガネ(多分老眼鏡)をかけ、マイクを持ってこちらを向いた。何と日本語で「ニホンノミナサマ、ヨウコソ、アルフレッド・ハウゼ・ガクダンノ、コンサートニ、オイデクダサイマシタア」ですって。これ以降曲の紹介を日本語で言ってくれるのでした。曲が始まると楽団の後ろのスクリーンにも曲名が映し出されるので日本語MCが無くても充分なのに、わざわざアルゼさんの紹介を入れてコンサートを進めるのはやはり54年前から開催している日本でのコンサートのスペシャル感をアピールしている様です。55分あった第1部の選曲は我が家の元祖アルフレッド・ハウゼ楽団のレコードに収録されていた日本のタンゴ・ファン向けの様でした。ヴァイオリン・ソロで始まる情熱的な“ジェラシー”はレコードで何百回も聴いたアレンジが懐かしい!どの演奏も素晴らしすぎて前半だけでチケット代¥8800の元が簡単に取れてしまいました。
 たまに“ハンガリア序曲”が登場したりするのはドイツの楽団だからでしょうか?また、“ママ、恋人が欲しい”なんて私の知らないチャーミングな曲ではリズム・セクションの4人をフィーチャーしたジャズ・アレンジが楽しい。ここではストリングス・セクションがバックの存在になって、まるでトミー・ドーシー楽団の様な演奏スタイルを見せたり、エンタテインメントを忘れない構成もナイス。いつ出るのか?という位日本人の大好きな“ラ・クンパルシータ”は堂々の第1部のラストを飾りました。
 「アルゼさん、まさかポピュラーな選曲のまま終わらないだろうね?」という私の読みは見事に当たり、第2部は“黒い瞳”でスタート。さらに戦前の日本でフレッド・アステア主演のミュージカル映画『空中レヴュー時代』で紹介され大ヒットした“月下の蘭”など通好みの選曲でおしまくる。この“月下の蘭”の演奏を聴いているとアステアの優雅なダンスが、また“奥様お手をどうぞ”が登場すると、ビング・クロスビーが歌い町の人々が踊った映画のワンシーンが目に浮かびます。また、“エル・チョクロ”は淺野康子さんが振付したタップのナンバーがあったっけ?なんて色々な事を思い出しながら演奏を楽しみました。いやあ、2時間近いタンゴのコンサート、ホントに漫喫いたしました。

 こうしたタンゴのコンサートのアンコールってどんな感じになるのか?大変興味深かったのですが、まずリーダーのアルゼさんだけが袖に消え、なりやまぬ拍手の様子を見て再び舞台上に登場して演奏します。“ミリタリー・タンゴ”なる珍しいタンゴに続いて「モ、イチド“ラ・クンパルシータ”ネ」と愛嬌のある日本語で説明してこの日2回目の“ラ・クンパルシータ”を大サービスしてくれました。
 コンサートが終了してロビーに出ると何やら張り紙が!近づいてみるとセットリストが張り出されてました!嬉しいけどアンコール曲まで書きだされているのには笑ってしまいました。

天野 俊哉



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