TAP DANCE LOGO
INSTRUCTORS
STUDIO : 戸塚スタジオ
NETWORK
SCHEDULE
EVENTS
COLUMNS
DANCE TEAMS
LINKS
OUR MASTER : 佐々木 隆子
COLUMNS

Vol.1587 スタンリー・ドーネン監督追悼《後編》
 ミュージカル映画の大スター、ジーン・ケリーと共同で『踊る大紐育』や『雨に唄えば』等のMGMミュージカルの名作を世に送ってきたスタンリー・ドーネン監督が2月21日に94歳で亡くなりました。コラム《前編》では、ケリー&ドーネン監督のあたりを軽く取り上げましたので、今度はドーネン監督のみの作品を。

 MGM撮影所の振付師、もしくはジーン・ケリーの相棒的存在から一人前の映画監督に脱皮するに至ったのが1951年のフレッド・アステア主演のミュージカル『恋愛準決勝戦』でした。ベテラン監督の代役であり、新人監督でありながらミュージカル映画の神様とも言うべきアステア様を自由にいじりまくりました。若い女の子を追いかけ回す好色な王様を演じさせたり、体育室の道具や帽子掛け相手に踊らせたり、揺れる客船の中で転がる果物を避けながら踊らせたり、えらく長い歌詞の歌をガムを噛みながら歌わせたり、若い女の子にパンチを喰らわせたり、360℃グルグル廻る部屋の中でタップを踏ませたり、最後には腕にお猿さんを飛びつかせたり、もうアンビリーバブルな演出プランで新しいもの好きのアステア様を驚喜させたに違いありません。

 フレッド・アステアやジーン・ケリーに続けとばかりにMGMの若手スターの育成に駆り出されたドーネン監督。タイトルは『Give a Girl a Break』。単なる若い女の子の出世物語。キャストにマージ&ガワーチャンピオン、デビー・レイノルズそしてボブ・フォッシー。あまり集客が見込めなかったドーネン監督「なら、遊んじゃえい!」と言ったかは知りませんが、振付のチャンピオンとフォッシーと3人でやりたい放題。際立っていたのが私とは縁の深い曲“In Our United States”ナンバー。誰が言い出したか知りませんが
「画面一杯に風船を飾って空から降らせて全部割って踊りたい!」
「でね、そのフィルムを逆に映写したいんだけど!そうすれば風船が昇ってゆくでしょ?」
 それをやってしまったんですねドーネン監督。
 今日ガワー・チャンピオンとボブ・フォッシーはブロードウェイ・ミュージカルの伝説になりました。

 この様に1950年代のドーネン監督は、それまでの舞台をベースにしたミュージカルである『パジャマ・ゲーム』『くたばれヤンキース』をシネ・ミュージカルに発展させ、さらに『掠奪された七人の花嫁』『パリの恋人』など新しい感覚のミュージカル映画までも大ヒットさせました。
 またミュージカル映画以外にも才能を発揮したのがドーネン監督で、いささか最盛期を過ぎてしまった時期のケイリー・グラントにサスペンス作品『シャレード』を、イングリッド・バーグマンにコメディ作品『無分別』を、オードリー・ヘプバーンにドラマ『いつも二人で』等の魅力的な題材を用意して監督しました。そして、いずれも全世界で大ヒットさせました。
 ドーネン監督の素晴らしさは彼の作品をひとつでも観れば良く分かるのです。帰宅したら追悼上映をしなければ!
 ミュージカル映画の名監督スタンリー・ドーネンのご冥福をお祈りいたします。

天野 俊哉



Copyright 2005 Y's Tap Dance Party. All rights reserved.