TAP DANCE LOGO
INSTRUCTORS
STUDIO : 戸塚スタジオ
NETWORK
SCHEDULE
EVENTS
COLUMNS
DANCE TEAMS
LINKS
OUR MASTER : 佐々木 隆子
COLUMNS

Vol.1586 スタンリー・ドーネン監督追悼《前編》
 毎週日曜日の夜、『東京リズム劇場』のお稽古に参加して沢山楽しんでおります。もちろん自分が出ないダンスやお芝居を見てです。もうお客様よりも前にこんなに楽しんでしまってご免なさい!先日、久々に白川希さんと帰り道が一緒になったのでミュージカルの会話を楽しみました。フレッド・アステアを筆頭に、『踊る大紐育』のヴェラ・エレン、『パリの恋人』のオードリー・ヘプバーン、さらには白川さんが橋本祥先生と踊った『恋愛準決勝戦』のオマージュ・ナンバーや私が増田千草さんと踊った『Give a Girl a Break』のオマージュ・ナンバーまでたっぷり。
 翌朝、仕事先近くのカフェに置いてある朝刊で《スタンリー・ドーネン監督死亡》の記事を見て驚きました。なんせ前の晩、私と白川さんが熱く語ったミュージカル映画のほとんどがスタンリー・ドーネン監督作品だったからです。そう、ドーネン監督はハリウッド・ミュージカル映画のレジェンドなのですね。それにしても94歳までご存命だった事は全く知りませんでした。

 ブロードウェイのダンサーだったドーネンは、ジーン・ケリーと親しくなります。お互いの舞台や映画でのクリエイティブな仕事を共有し助け合ったのです。ちょうどダンサーのフレッド・アステアと振付のハーメス・パンみたいな関係ですかね。ケリーが主演した『カバーガール』(1944)でのケリーが自分の分身と踊る葛藤のダンス・ナンバー、『錨を上げて』(1945)でのケリーとアニメのネズミ ジェリーが踊る独創的なダンス・ナンバー、『Living in a Big Way』(1947)でのケリーとワンコのデュエット・ダンス、建築中の建物の上でのアクロバット・ダンス等はドーネンが全面協力したと言われています。
 また、同じ時期にMGM映画『Best Foot Forward』(1943)ではジューン・アリスンのパートナーとして出演しています。振付師スタンリー・ドーネンとしての作品では、意外にもMGMよりも小さなコロンビア映画のB級ミュージカル『Hey Rookie』(1944)でのアン・ミラーのタップダンス・ナンバーの振付の方が記憶に残っています。

 1948年、ハリウッド映画界で箔を付けてきたジーン・ケリーとスタンリー・ドーネンの2人の才能を見抜き、もっと成長させたかったMGMミュージカルの名プロデューサー、アーサー・フリードが2人に何故か脚本の提出を求めました。そしてバズビー・バークレーが監督、ケリーとフランク・シナトラが主演して完成したのが『私を野球に連れてって』(1949)でした。映画化されたものが傑出したものかどうかは謎ですが、これですっかり株を上げた2人をフリードは、1944年にMGM映画が製作資金を出したブロードウェイ・ミュージカル『ON THE TOWN』映画化の監督に昇格させたのです。

 『ON THE TOWN』日本公開題名『踊る大紐育』(1949)を映画化するにあたり、楽曲の大幅な入れかえに加え、ケリーとドーネンは予算と時間のかかるニューヨークでのロケーションを主張しました。私は長年、このニューヨーク・ロケがどの程度効果があったのか半信半疑でしたが、日本で上演されたふたつのブロードウェイ舞台版を観てその地味さにがく然としました。なるほど!
 オープニング・ナンバー“New York New York”で3人の水兵が街の中を駆け回るスピードこそが映画版の成功を決定付ける物だったのですね。あら不思議?と感じたのがオープニング・ナンバーが終わった途端に(MGMのセット撮影の部分)舞台劇の様に静かに進行してゆくのですね、この作品て。

 さて、『踊る大紐育』の大ヒットによりMGM映画でトップにのぼりつめたケリーとドーネンの監督・振付コンビは、やがて『踊る大紐育』と同じ、製作のアーサー・フリード、脚本のベティ・コムデンとアドルフ・グリーン、MGM撮影所の最強スタッフらと『雨に唄えば』(1952)『いつも上天気』(1955)を創りました。残念ながら、数あるインタビュー映像や評伝を探ってもこのコンビのどちらが何をどれだけしてきたのかは分からないのです。ただし、後年1957年にドーネンがパラマウントで単独で監督したミュージカル『パリの恋人』を観ればオープニングの“Think Pink”ナンバーの色彩・照明・カット割り等の撮影技術、そして振付が『踊る大紐育』のヴェラ・エレンの“ミス地下鉄”のナンバーとよく似ている事に気がつきます。まあ、ハイセンスな方であった事にはかわりありませんね。

 さて、ここまでこのコラムを打ってきて一休み。移動前に京急蒲田のアーケードで中古DVDの店にチラッと寄りました。お店の一角に何となしに輸入ビデオが立て掛けてありました。MGMミュージカルのシリーズ『パリのアメリカ人』『絹の靴下』『オクラホマ』に加えてドーネン監督作品『掠奪された七人の花嫁』そして『踊る大紐育』がありました。これら全て¥280でしたがもう持ってますからね。パス。

 つづく。

天野 俊哉



Copyright 2005 Y's Tap Dance Party. All rights reserved.