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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1563 DVD情報『踊る不夜城』(1937)
 昨年大晦日の朝、テレビのリモコンを操作していたら情報誌には掲載されていないMX2局で何やら白黒画面の古めかしい映画が始まったのでびっくり、映画は1929年にアカデミー作品賞を受賞したMGMミュージカル映画『ブロードウェイ・メロディ』でした。
 やがて、MGM映画はこの『ブロードウェイ・メロディ』のタイトルを使い、タップの女王と呼ばれたエレノア・パウエルを主演にしたミュージカル映画のシリーズを1935年から1940年まで3本製作しました。

 この度古い映画のDVDを発売しているジュネス企画からブロードウェイ・メロディ・シリーズのひとつ『踊る不夜城』“Broadway Melody of 1938”が発売されます。日本ではWOWOW開局の時にテレビ放映された以外は、ジュネス企画からビデオ発売された位です。
 私は40年も前に16oフィルムでの上映会で、大きなスクリーンで観たのが最初です。テレビでも映画館でもMGMミュージカルを全く観ることが出来ない時代だったので、私は今でもこの作品に特別な愛情を持っていますが、作品の出来は星3つがやっとですかね?
 舞台は当然の事ながらブロードウェイですが、競馬の話が同時進行します。MGMが1937年に製作した映画には競馬ものが多くて、他にクラーク・ゲイブル主演『サラトガ』やマルクス兄弟主演『マルクス一番乗り』があります。ここでは身長190p以上もある大男のバディ・エブセンが騎手になるのでかなり無茶な作りです。
 物語の主人公は『椿姫』『哀愁』のハンサムなロバート・テイラー。舞台のプロデューサーを演じますが、歌いも踊りもしない彼とエレノア・パウエルのドラマの部分が好きです。夜のアパートの屋上からブロードウェイの劇場街を見ながら語り合う恋人同士の場面など今日の映画には全く無くなってしまった魅力的な場面です。

 ミュージカル・ナンバーを担当するのがエレノア・パウエル、ジョージ・マーフィ、バディ・エブセンら3人のタップ・ダンサーとソフィ・タッカー、ジュディ・ガーランド、チャールズ・イゴール・ゴリンら3人の歌手です。
 ベテラン歌手ソフィ・タッカーの存在感と、MGM映画の新人だったジュディ・ガーランドの売り出し方がお見事。オペレッタの世界のチャールズ・イゴール・ゴリンだけがハリウッド式に無駄に使われてて笑える。大御所ソフィ・タッカーが“Some of These Days”という名ナンバーを歌う場面を見ていたら、数年前にある方がこの曲でストリップでタップを踏んだ事を思い出してしまいました!(コラムVol.484をご参照)。

 これが主演3作目のエレノア・パウエルにやっとバランスの取れた相手役ジョージ・マーフィがキャスティングされ、ダンス・ナンバーがぐっと面白くなりました。競走馬を運ぶ貨車の中でマーフィとエブセンが歌い踊り、パウエルが加わるナンバー“Follow in My Footsteps”は3人3様のスタイルが楽しい。夜の公園でのパウエルとマーフィのデュエット“I'm Feeling Like a Million”は、場面の始まりから歌が始まりステップを踏みだす流れがスムーズで良いのです。踊る2人も、曲も、踊りを眺めるカップルたちも全て素敵なのにナンバーが進行してゆくにつれドタバタになるのがあまりに勿体ない。ただ、そうせざるを得なかったのは、映画の中でのパウエルとマーフィは《友達以上恋人未満》という位置付だから中途半端な終わり方になったのだと思ってます。現在、YouTubeでは後半のタップダンスから先を観ることが出来ます。

 フィナーレの舞台でのパウエルとマーフィのデュエットは、タップでないけどもショーとして普通に踊るだけなので観ていて安心だし、マーフィのリードがとにかく素晴らしいのです。エブセンが少女時代のジュディ・ガーランドと踏むタップが軽やかで何度でも観たくなりますよ。黒燕尾服姿のエレノア・パウエルが男性ダンサーをズラッと従えて踊るソロのタップ・ダンスを観てしまうと「この人には男性とのデュエット・ナンバーは必要ないかも?」と感じてしまいますね。現代の日本でも男性の相手役を必要としている女性タップ・ダンサーってほんとうに少ないですよね。やはりタップ・ダンスってソロで勝負する物なのかも知れません。

 『踊る不夜城』ぜひ一度ご覧くださいね!

天野 俊哉



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