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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1267 私は映画「LA LA LAND」をこう観ました!別編
 映画「LA LA LAND」については既に天野先生がコラムVol.1262で書いてくれたので、私は劇中に登場するクルマにテーマを絞ることにします。
 そもそもこの映画を知ったのは、愛読誌「カー・アンド・ドライバー」に連載中の山内トモコさんのシネマレビューでした。主人公二人のダンスシーンや作品中にちりばめられた歴代ヒット映画へのオマージュ(マネじゃないんです)もさることながら、ハイウェイでのミュージカルシーンに興味をそそられたのが観に行く動機の一つでした。
※この先はクルマにご興味のない方や、少しでもネタバレがイヤ方はお読みにならない方がよろしいです。
 さて、オープニングのハイウェイのシーンを観て先ず思ったのが、「いつの時代なんだ?」。いきなり1970年代のトヨタカローラやコロナマークUが並んでいるし、80年代のフォードや他のクルマなんてボンネットもルーフもボコボコじゃないか。いくらアメリカに梅雨や車検がないからといったって、ポンコツ過ぎやしないか?リハーサルやテイクを重ねて凹んでしまったのは分かっているけど、そこそこ新しいクルマの上では飛んだり跳ねたりしないんだね。いくら中予算(といっても3,000万ドル)だからといって、せっかくの大規模なオープニングシーンにコストの制約的なところが透けて見えてしまったのはちょっと残念。そうはいっても、長回しのワンカットは見事!素晴らしいカメラワークです。
 主人公のミアとセブが初めて出会うのは、この大渋滞のハイウェイ。ミアのクルマはトヨタのハイブリットカー旧々型プリウス。日本では低燃費車の代名詞として有名ですが、アメリカでは有名の意味合いがちょっと違うんです。
 映画ファンならずとも、アカデミー賞の授賞式でドレスアップした女優やタキシードの男優が、レッドカーペットの前でリムジンから降りる姿をご覧になったことがあると思います。実に絵になるシーンですし、役者にとって最高の晴れ舞台ともいえます。2005年、その授賞式で“事件”が起きました。レオナルド・ディカプリオがエコカーのプリウスで乗り付けたんです。ディカプリオがプリウスに乗っている理由は低燃費=お財布にやさしいから、ではなくてCO2削減=環境にやさしいから。アメリカの上流階級はCO2削減に相当な関心があるそうで、ディカプリオにあやかろうと、その後プリウスがバカ売れ。映画の中でパーキングのキークロークにプリウスのキーがズラーッと並んでいるのが、その辺りを皮肉っているようで笑えました。
 ミアがプリウスに乗っている理由も環境にやさしいからなのか、ロスアンジェルスは生活コストが高いから、少しでもお財布にやさしい方がいいからなのか、そんなことを考えさせるおもしろいクルマ選びです。
 対してセブのクルマはアメリカの高級ブランド、ビュイックの1984年式リビエラ・コンバーチブル。80年代のアメ車業界は、“安い・丈夫・低燃費”三拍子そろった日本車との競争で厳しい状況にありました。そこでメーカーは少しでもコストを下げるため、ビュイックやキャデラックなどの高級ブランドに大衆車のシャシ(車台)を流用し、駆動方式も伝統のFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)に変更。その結果、“見た目は高級車でも乗り味が大衆車”という中途半端なクルマになってしまい、評価もダメダメとなりました。
 ジャズをこよなく愛するセブが、生活のために好きでもないジャンルでシンセサイザーを弾き稼ぐ姿と、理想と現実の狭間で伝統を棄てたリビエラの成り立ちが重なって見えて、ちょっと切ない組み合わせです。
 5年後、ミアがご主人と、彼女の主演映画の試写会に向かいます。その時のクルマが、スウェーデンの誇り、ボルボ。必要以上に主張しない奥ゆかしさと品格を併せ持ち、安全性も世界一と言われているブランドです。ミアのご主人のことも「あっ、家族思いのいい人なんだな」と思わせてしまう、絶妙なセレクトです。もしこれがフェラーリやランボルギーニみたいなスーパーカーや、そこまでいかなくても自己主張の強い高級ブランドだったら、私のような器の小さい嫉妬深いヤツは「金と権力にものをいわせてミアを手に入れやがって」などと思い込み、それになびいたミアの印象すら最悪になってしまうところです。そう考えると、人物像とクルマのイメージって、けっこう大切な気がします。
 以上はあくまで私の勝手な妄想なので、実際の演出にそんな狙いがあったのかどうかは定かではありませんが、映画とクルマは切っても切れない関係であることは確か。登場するクルマをちょっと斜に構えて見てみるのも一興かもしれません。
 “LA LA LAND”とは、ロサンゼルスの愛称の他に“おとぎの国、 夢の国、 桃源郷”という意味もあるそうで、タイトルを深読みすると、“ロサンゼルスで綴る、ある男女のおとぎ話”とでもいったところでしょうか。
 個人的には“ほろ苦”どころか、ミュージカルシーンが全て吹き飛ぶ程のカカオ100%激苦でした。
 長々と失礼しました。

Y's取材班




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