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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.83 ショービジネス・コラム(2008夏その1)
まだまだ暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか。
映画のこととなると更に熱くなってしまう天野が書きました「ショービズ・コラム」にしばしお付き合いのほどを。さて、まずはこの方の追悼文から。

<シド・チャリス追悼>
1950年代のMGMミュージカルの名花シド・チャリスが亡くなりました。
背が高くて見事なバレエ・テクニックを見せたシドですが、タップと歌には弱かったようです。彼女のラッキーな所は、フレッド・アステア、ジーン・ケリー、そしてヴィンセント・ミネリ監督ら大御所から大切にされたことに尽きます。デュエットにおいても、ソロにおいても魅力的なナンバー(そして衣裳も)が用意され、今日の名声につながっているからです。「バンド・ワゴン」「ブリガドーン」「絹の靴下」(3本ともワーナー・ホームビデオからDVD発売)など名作が多いのですが、私はジーン・ケリーがローラースケートでタップを踏むことで有名な映画「いつも上天気」が大好きです。ボクシングジムでボクサー達を従えてダイナミックに踊るシドのナンバーが私のベストワンです。
そして「ベスト・パートナーは誰?」と聞かれたら、アステアでもケリーでもなく、私は迷わずダン・デイリーと答えます。シドとダンは1956年のMGMミュージカル「ラス・ヴェガスで逢いましょう」で共演しているのですが、ダンは190cm以上の長身なので、シドも思いきりハイヒールを履いて背筋も伸ばしてイキイキしていました。アステアやケリーと踊る時はいつも低めのパンプスでしたからね。70代になってから出演し、思い出を語っていた「ザッツ・エンタテイメント3」が遺作となってしまいました。

<エド・ウッドの映画に突如タップダンスが!?>
ジョニー・デップが伝記映画で演じたことで超有名になってしまった“史上最低の映画監督”として知られるエド・ウッドですが、彼のB級ならぬZ級サスペンス「Jail Bait」(1954)が「牢獄の罠」というタイトルでDVD発売されました(WHDジャパン)。劇中劇としてミンストレル・ショーのシーンが突如現れます。黒塗りをした男女が退屈な歌を歌ったあと、男性がコミカルなタップを踏みます。
お金のかかっていない低予算映画には不釣合いなショーナンバーなので、たぶんエド・ウッド監督がどこかで見つけた映像を勝手に使用したのでしょう。そう見えてしまうあたりが、またチープで、映画オタクの私にはたまりません。このDVD、渋谷・池袋のレコファンなどで入手可能です。興味のある方(まずいませんね!)はどうぞ。

<新刊情報:ジェローム・ロビンスと赤狩りと、なぜかそこにジーン・ケリー>
近年、日本人ライターによる優れたノンフィクションものが増えてきました。黒澤明監督がどうして「トラ・トラ・トラ」(日米合作の戦争映画)を降板したかを500ページにわたって検証した「黒澤明VSハリウッド」などはその代表と言えます。「ウエスト・サイド物語」の振付師ジェローム・ロビンスが、アメリカ最悪の政治スキャンダル「赤狩り」に関与していたと言う、ぶったまげた話「ジェローム・ロビンスが死んだ」(平凡社¥2,940)が、彼の死後10年たって出版されました。しかも翻訳ものではなく日本人ライターによる書下ろしです。
「踊る大紐育」(On the Town)がらみで、舞台版振付のジェローム・ロビンスと、映画版振付のジーン・ケリーをバッティングさせるのかと思いきや、珍しい写真と豊富な情報量で読者をあっと言わせます。そう、ジーン・ケリーはハリウッド映画界では、ロナルド・レーガン、ウォルト・ディズニー、ヘンリー・フォンダらと共に、政治のうるさがたとして有名だったスターで、特に「赤狩り」に反対するグループのリーダーの一人として記憶されています。ただ、彼らダンサーが主人公であるこの本は、あくまでも政治の話が中心なので、今まで出版されてきた「赤狩り」を扱った本と同様、かなり難しい内容であり、ダンス関係者にはあまりお薦めできません。それでも興味のある方は書店での拾い読みをお薦めします。

<ダグラス・サーク監督映画祭のなぜ??>
私が学生の頃、TVの深夜劇場で実にひんぱんに放送されていたものに「風と共に散る」「悲しみは空の彼方に」という映画がありました。今年の「ぴあフィルム・フェスティバル」のひとつ「ダグラス・サーク映画祭」で、これらの作品が上映されると知って驚きました。なぜなら、サーク監督はユニヴァーサル映画のB級メロドラマの監督という位置付けだったからです。トッド・ヘインズ監督らが再評価しているとか、2年前には「サーク・オン・サーク」なるインタビュー本も出版されていることから、最近クローズアップされてきたようです。確かに私がTVで観た環境は最悪でした。真夜中、日本語吹き替え、大幅なカット、そして10分おきに入るCMの数々(歌舞伎町ステーキ・ホリタン、吉野家、中古レコードのハンター、目黒エンペラー、そして今でもそのメロディーが口ずさめるキャバレー・ロンドンなどなど)。ひょっとすると「すごい監督だったのかも知れない」と思い始めた私は、さっそく前売り券を買い求め、立ちくらみしそうな暑い日にもかかわらず渋谷の映画館へ。スクリーンで30年ぶりに再会したサーク作品には大人の映画の香りがあり、「ヨーロッパ・テイストを持ち合わせた味わい」が魅力でした。ただ、ピークを過ぎた女優達(バーバラ・スタンウィック、ジェーン・ロイマン、ラナ・ターナー)が主役であり、どことなくくたびれた映画でもありました。若いツバメを演じた長身でハンサムなロック・ハドソンも、のちのちゲイであることが明るみになり、エイズで亡くなってしまったなあ、とそんなことが頭の中を駆け巡ってしまいました。結局のところ、私にとってはTVの深夜劇場でCMとブレンドしながら観たあの頃と同じ印象しか持てませんでした。

天野 俊哉





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