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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.65 若き日の稽古指導日誌−アクションスター VS 巨匠
私が少年の頃(古い話でスミマセン)、最大のスターは千葉真一さんでした。マルベル堂というブロマイドのお店で、何年にもわたって売り上げNo.1でした。TV「キイハンター」のかっこいいアクションが魅力でした。最近ではハリウッド映画「Kill Bill」に堂々と出演していましたね。千葉さんが、自分の率いるジャパン・アクション・クラブ(JAC)の公演を毎年上演していた頃、隆子先生の代役として千葉さんの指導から舞台稽古まで担当したことがあります。「酔いどれ公爵」(1985)というミュージカルでした。
映画スターの方というのは必ずと言っていいほど取り巻きの人達がいます。私がレッスンに行った時も、若き日の真田広之さんや志穂美悦子さんら7〜8名の方々が、千葉さんの個人レッスンに立ち会いました。何と言うか、マフィアの親分に教えていて、銃をかまえた子分達に囲まれているみたいな場面を思い浮かべてください。もし、千葉さんがステップをまちがえても「絶対に注意してはいけない」という不思議な空気がありました。私は千葉さんが「ねえ先生、ここはこうでしたっけ」と質問してきた時だけ答えるという、実に頼りない存在でしかありませんでした。運動神経抜群の千葉さんだけあって、とてもダイナミックな踊りに仕上がりました。
全盛期のJACは、新宿に大きな養成所を持っており、タップのレッスンもカリキュラムに入っていました。熱心という点では、他の生徒さんと変わりはないのですが、すごいのは毎回、腕や足を骨折している生徒が必ず4〜5人はいたことです。包帯を巻いて、松葉杖をついてやって来るのです。「見学していいんですよ」と言っても無駄。もう少しでミイラ男状態という男の子が足をひきずってタップを踏む姿には、思わず笑ってしまいました。
さて、新宿コマ劇場での「酔いどれ公爵」の舞台稽古には、もっとすごいことが待っていました。数年前になくなられた深作欣ニ監督です。千葉さんの尊敬する深作監督がアクションのアドバイザーとして見えました。さすがに巨匠と言われるだけあって監督の前では天下の千葉さんも小さく見えました。立ち回りの場面になると、がぜん張り切る深作監督は、ここが舞台であることを忘れて「だめ〜、カット、カット」と叫んで、客席から舞台に駆け上がって行くのです。私の周りにいたステージ・スタッフの方々がそのたびに大笑いして「ここは東映じゃないのに」とずっこけていました。
そんな深作監督ですが、千葉さんが指導したであろうその立ち回りを、その場でどんどん作り変えてしまうあたりは見事でした。ずっこけていたステージ・スタッフの方々も「ほう」「おう」「うん」と声をあげて感心していました。
強烈なエピソードの連続だったせいで、どんな舞台だったのか全く覚えていません。

天野 俊哉





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