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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.57 ビッグバンド・ジャズたっぷりのミュージカルDVD情報
スパークビジョンという会社が、1940年代のジャズメンの出演するミュージカルDVDを販売しているので、今回はその情報です。
版権切れのため、ビデオの時代から広く多くの会社から出回っていたのが「プライベート・バッカルー」「ステージ・ドア・キャンティーン」「ドーシー兄弟物語」の3本です。ハリウッドの小さな映画会社が製作したセットや衣裳にはお金をかけていない作品です。

「プライベート・バッカルー」(1942)
ユニヴァーサルが作ったとは思えないくらい安っぽい映画です。サイレント映画時代、喜劇王バスター・キートンの傑作コメディを監督していたエディ・クラインが監督と言えば期待する方も多いはずですが、ギャグもジョークもひどいものです。
ところが、音楽シーンとなると、ジャズの好きな人にはたまらない作品です。映画スター並みのルックスで、トランペッターとしても、バンドリーダーとしても当時のアメリカでNo.1の人気者だったハリー・ジェームズが主演しています。 そして、戦時中、大人気の女性コーラス・グループ、アンドリュース・シスターズが共演。“You Made Me Love You” “Don't Sit Under the Apple Tree”などのヒット曲がフル・コーラスで登場します。 さて、当時のユニヴァーサル映画には、10代の若いダンサー達がいました。男性が後に「雨に歌えば」に出演するドナルド・オコンナー、女性が子供の頃からタップで有名なペギー・ライアン、そして全米ジルバ・チャンピオンで人気のあったジャイビン・ジャックス&ジルズというチーム。この作品では、H・ジェームズ楽団の演奏“James Session”でジルバやタップで底力を見せてくれます。ダンス・ナンバーは残念ながらこれ一曲です。

「ステージ・ドア・キャンティーン」(1943)
戦時中大ヒットした映画のひとつです。映画や舞台、ラジオのスターがたくさん出演していますが、よっぽどディープなファンでなければ、それが誰であるかわからないはずです。名前を入れる字幕サービスなどあっても良かったのでは? お皿を洗っていて急に上半身裸になる「ジョニー」が、ターザン・スターのジョニー・ワイズミュラーと知らなければ単なる変態ですよね。一番最後に出てきて、強い印象を残す「ミス・ヘプバーン」も、あの大女優キャサリン・ヘプバーンと気づかなければ意味ないし。興味を持たれてこれが知りたいと言う方は連絡ください。
そんな中で、歌手やダンサー、アーティストやバンドは司会者による紹介があるので助かります。ところが、私はこのDVDを買ってカット版であることにショックを受けました。 16分近いカットの多くは音楽シーンだったからです。作品解説に書かれているジャズ歌手ペギー・リーの歌がバッサリ。当時、一番の売りであったジプシー・ローズ・リーのストリップ・ティーズもバッサリ。そして、ブロードウエイのショー・ストッパーであるタップダンサーのレイ・ボルジャーは、歌とタップ以外のすべてが、とてもきれいにカットされています。このDVDを販売した会社は、映画通ではなかったのでしょうね。とても残念です。
有名なジャズメンでは、ベニー・グッドマン楽団(ピアノがジェス・ステイシー、ドラムがルイ・ベルソン)と、カウント・ベイシー楽団が出演。

「ドーシー兄弟物語」(1947)
伝記映画というのは普通本人とは似ても似つかないくらい美形の俳優によって演じられ成り立つものです。過去の歴史の中で、本人が演じてしまったのはこのトミー&ジミー・ドーシー兄弟だけでしょう。スイング・ジャズのリーダー達の中で、これだけケンカ好きな兄弟も珍しかったそうです。演奏中、取っ組み合いのけんかをすることが有名で、演奏シーンよりも面白いそうです。この兄弟、この映画が作られた頃から1956年に亡くなるまではとても仲良く活動したとか。
さて、兄のジミーは、性格も穏やかだったせいか、専属歌手だったボブ・エバリーやヘレン・オコンネルがゲスト出演して大ヒットした“Green Eyes”を再現しています。逆に弟のトミーは、専属歌手だったフランク・シナトラ、ディック・ヘイムズ、ジョー・スタフォードそしてドラムのバディリッチらが全く顔を出さず、そのせいでかなりスケールが小さく、地味になってしまいました。今では伝説となったこの一流のアーティスト達を見出して育てた恩師がトミーであったのに・・・。
このドーシー兄弟とどの程度の付き合いがあったのかは知りませんが、ナイトクラブのジャム・セッションに、アート・テイタム(ピアノ)、チャーリー・バーネット(アルト)、レイ・バデュク(ドラム)ら、一流のジャズ面が出演しています。ダンス・ナンバーはありません。
P.S. このコラムを書いているとき、この作品の主演女優ジャネット・ブレアの訃報が入ってきました。85歳だったそうです。美しい主題歌を歌っているのに、荒くれ兄弟のためにすっかり存在感の薄くなってしまった方。1940年代コロンビア映画の女優でしたが、ケイリー・グラント主演「此の虫十万弗」や、リター・ヘイワース主演「今宵永遠に」くらいしか記憶にありません。

天野 俊哉





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