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Vol.510 「善良なる市民」の謎
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12月26日、渋谷区松涛のサラヴァ東京で行われたレオナさんの舞台「或るウワバミ女、二四歳の誕生日に」を見てきました。レオナさんは、16の春、師匠・渡辺かずみ氏に出会いタップの虜になったという方で、ナショナルタップデーでは、なべ組の一員として出演しています。
チケット予約をするにあたり、まずは公演のチラシを見て、これは気合を入れて向かわねば、と思いました。出演者は6人ですが、どう見ても一筋縄ではいかない方ばかり。学生時代にアングラ劇場に足を運んだ私も、果たして付いていけるだろうかと心配になりました。ちなみにレオナさん以外の出演者は次のとおりです。
・第三子出産を機に独立したベリーダンサー、タカダアキコ氏
・豪州で突発的に図上にトースターを載せ、トーストガールとしてステージライブをスタートしたtoastie氏
・一年の半分は地方公演という、さすらいのアコーディオニスト、田ノ岡三郎氏
・鎌倉育ち、洗足学園ジャズコース、バークリー音楽大学を経て、山下洋輔とのデュオライブも行ったピアニスト、スガダイロー氏
・東京リズム劇場で新境地を開いた、ストリップ・タップが記憶に新しい、松本晋一氏。
会場は50人も座れば一杯になる極狭スペースで、立ち見も6人ほどいました。何とか空いた席を見つけ、周りのお客さんを見渡してまず思ったのが「ん?」。チラシのおどろおどろしさとは相反し、みなさんフツーというか、いかにも「善良なる市民」という感じなのです。シャーリーテンプルと思われるノンアルコール・カクテルをおとなしく啜っているおば様や、古いアメリカ映画に出てきそうな優良夫婦的カップル、注文しようとしたビールがチケット代に含まれるドリンクリストになく、200円増しと知ってやめてしまう若者など、なんだかとっても親しみを感じる人たちです。一体誰に誘われて、どのような経緯でここに来ることになったのだろうか、と私の好奇心は、これから始まる舞台よりも客席の方に集中してしまうのでした。
そんなこんなで、チケット代に含まれるグラスワインをちびちび飲んでいると、15分押しで突然舞台が始まりました。タップとベリーダンスの官能的というか生臭い感じのセッション、胎児の心音をマイクで拾いながら(toastieさんは実際に妊婦さんなのです)「お酒と出産はぁ〜」「懲リタ者ガイナイ」などと連呼するパフォーマンス。私は相当覚悟してこの場に臨んだにも関わらず、予想以上の展開にフリーズ状態。更に驚いたことに、「善良なる市民」である観客のみなさんが、別に戸惑う様子も無く、熱心に見入っていることでした。なぜだ、みなさんは何を考えながらこれを見ているのだ、と私の頭の中はクエスチョンマークで一杯なのでした。
20分ほどのインターバルを挟んで後半では、松本氏の○○マッサージ嬢のネタが登場。レオナさんの高度なテクニックにメロメロになった松本氏はI’m in Heavenに載せて愛のデュエットを踊りますが、アコーディオニストの男性に心が移り、レオナさんは独りさびしくやけ酒を飲む、というショートストーリーでした。
パフォーマンス終了後、その日は本当にレオナさんの誕生日だったらしく、出演者一同がバースデーケーキを運んできました。素に戻ってしゃべるレオナさんや他の出演者の方々はとってもフツーで、常識的な感じでした。違う世界に行っちゃって、私とは話も通じない人、という恐ろしい印象が一瞬にして消え、心から安堵感を覚えました。多分、観に来ていたのは生徒さんとかなんだろうなあ、と、お客さんたちがフツーだったことにも合点が行き、めでたく謎が解けて、穏やかな気持ちで家路につくことができました。はい、確かにレオナさんのステップはどれも高度なテクニックですごかったです、パフォーマンスが凄すぎて終わるまでステップに思い至らなかったですが。
天野先生の生徒
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