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Vol.409 東南アジア現代美術展に行ってきました
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みなとみらいの横浜美術館で開催された「Welcome to the Jungle 熱々!東南アジアの現代美術」展に行ってきました。タイトルの「ジャングル」は、「無秩序な、文明化されていない」という意味のサンスクリット語「ジャンガラ」に由来するそうで、多様な文化や価値観が共存し、ジャングルさながらの密度と熱気を帯びた東南アジアの現代美術を表す言葉としてピッタリといった感じでした。
ゆったりとした会場スペースにシンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの8カ国25組の作家による立体、絵画、映像、写真など多種多様な作品約30点が展示されており、中でも同展のチラシやポスターにもなっている写真シリーズ「イメルダ・コレクション#1〜5」が注目を浴びていました。
フィリピンの独裁者、マルコス大統領婦人のイメルダ婦人は、一家でハワイに亡命した際に首都マニラのマラカニアン宮殿に残された三千足の靴が伝説になっている程の浪費家として有名です。ちなみに故国に帰った彼女は、現在83歳で現職の下院議員だそうです。お元気ですね。写真はいずれも不条理で馬鹿馬鹿しく、浪費で知られた彼女への辛辣な風刺作品かと思いきや、解説には「イメルダ本人の許諾を得たもので、イメルダの孫息子が祖母の名を冠したネット販売のアクセサリーブランドを立ち上げる際に、制作依頼した広告イメージが元になっている」と書かれていました。イメルダ婦人がノリノリでファッショナブルな自分を誇示している撮影現場を思わず想像してしまいました。眺めれば眺める程、風刺なのか広告なのか判然としない作品でした。ちなみにネット販売ブランドのその後の売れ行きについては書かれていませんでした。
生成色の両開きカーテンをくぐって次の展示室に入ると、正面の壁の高い位置から逆三角形に掛けられた等身大10体の木彫像が目に飛びこんできました。解説によると、この作品は16世紀後半から約300年にわたりスペインの植民地だったフィリピンで起こった歴史的動乱から着想し、フィリピン古来の神や戦士、キリスト教の聖人で構成されているそうで、それらをキリスト教の伝統的な祭壇形式に反した逆三角形に配置することで、植民地支配下の権力構造や階級制度に対する疑義が込められているそうです。とても意味深い作品でしばらく眺めていたんですが、合板や木粉と卵の自然混合材などで作られているからでしょうか、室内中にカビのような酸っぱい臭いが漂っていました。臭いを自分の方に手で扇ぎながら、傍らにいた学芸員の方に「材料が材料なだけにけっこう臭いますね」と知ったかぶって言ったら、「申し訳ございません。只今こちらの空調設備が不調でして」と言われました。エアコンの臭いだったようです。
他にも興味深い作品が多数展示されていて、とても観応えがありました。
経済、文化、宗教など、様々な課題を抱えながらも明日を切り拓こうとしている東南アジアの人々の“熱々”を感じることができる展示会でした。
Y's取材班
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