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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.337 公演を終えて(天野篇)
 1年4か月ぶりの「PRECIOUS」お楽しみいただけましたか?
 実は前回以上に、9月8日を迎えるまでハラハラドキドキの連続でした。というのも公演でお見せしようとしていた企画のバッティングが次々と・・・

「まみ散歩」
 昨年の公演で10分もの大作となった映像「まみ散歩」。そのパート2という案も出たのですが、映像に関してはさまざまな企画があったのでやめました。ただ前回見逃した方からの「ぜひ観たい」というリクエストが多かったので、「開場時間内に映そう」とういうことに。そんな時、本家「ちい散歩」の地井武男さんが亡くなり、「まるで追悼上映だね」という判断からついに中止にしました。今までも、「恋の嵐」の稽古中に大原麗子さんが、「冬のソナタ」の稽古中にパク・ヨンハさんが、など、どうもY's作品と亡くなる方の時期がバッティングしてしまうことが多いようで・・・

「ギンガムチェック」
 昨年はMGMのミュージカル女優ジェーン・パウエルとデビー・レイノルズの衣裳をアレンジしましたが、淺野の新しい衣裳は「バンド・ワゴン」でナネット・ファブレイが着たブルーのギンガムチェックのワンピース。いつも素敵に作ってくださる衣裳さんの手により、見事に再現できました。
 しかし、公演10日前の8月29日に発売されたAKB48の新しいCDのタイトルが何と「ギンガムチェック」!! 大島優子さんとメンバーの方々がブルーのギンガムチェックを着用。もう1着の1940年代にジェーン・ヘイバーが着たアイルランド民謡の衣裳の方は無事、バッティングなしです。

「指揮」
 2人の千夏さんがチャレンジしたオープニングの指揮。昨年“Amapola”でヴァイオリンを弾いてくれた田邉知可子の熱の入った指導により、堂々とした指揮者に仕上がりました。こちらはあくまでもエアなのですが、7月「ロンドン・オリンピック開会式」では、Mr.ビーンのローワン・アトキンスさんが指揮を!! 8月には日本テレビの「24時間テレビ」で、嵐の松本潤さんが指揮に挑戦を!! かくれブームになっているのでしょうか?

「踊らん哉」
 フィナーレで使用したのが、フレッド・アステア、ジンジャー・ロジャースの名作「踊らん哉」(1937)で、ジョージ・ガーシュインが作曲した曲。古い名作映画を上映するシネマ・ヴェーラ渋谷の「世界名作」特集に、何と「踊らん哉」が登場。「今頃上映しなくてもいいのに」と思いながらも、ついつい劇場に足を運んでしまいました。
 ところが、映画が始まると内容を楽しむどころではなく、スクリーンに映し出されるアステア&ロジャースの踊りにもうわの空。「あっ、ここで子どもたち」「ここでフェードインして」「淺野を迎えて」「緞帳11秒」など、公演でのきっかけが頭をよぎってしまい、落ち着いて観ていられませんでした。

 というわけで、何となく「あと出し」感が残ってしまい、偶然とは言え、反省しなければと思いました。同じバッティングでも今年は「ルパン三世アニメ化40周年」だそうで、淺野は良いタイミングで「Lupin the Third」を出しましたね。

「若いタップ・ダンサーのチャレンジ」
 公演の企画段階で面白いのは、「あれをやりたい」「これをやりたい」というメンバーの前向きな気持ちがわかることです。阿部を除けば、たったひとりソロに挑戦したのが秦香織。「自分はこれを踊りたいです」と書かれたCDを借りて、そのCDを毎日聴いていました。実は「K」というタイトルの曲がとても面白くて、私は気に入ってしまいました。その選曲センスはかつて向井雅之君が、当時誰も使ったことのないチャーリー・パーカーの曲や、まったく乗れない“Pastel”という曲に通じるこだわりがあって、秦には「K」をやるべき!! と何度も言おうと思いました。ただ、淺野も私も、今回はポピュラーでお客様受けする“My Favorite Thing”を薦めることに。秦には、いつの日かボツになった「K」を創り上げてほしいと願っています。

「スケジュール表」
 数々の楽しい映像が流れましたが、これを手がけたのはスタッフにクレジットのないMr.Xです。6月のある日、出演者全員に台本と撮影スケジュール表が配付されました。電車の時刻表のように緻密でよく組まれたスケジュール表に驚き、学生時代にアルバイトでやっていたTVドラマのロケーションを思い出しました。7月22日の日曜日午前9時から午後9時までの12時間で、予定通りぴったり撮影が終了したそうです。カメラマンの方、音声の方、そして演出・小道具・衣装などすべて担当のMr.Xの3人の段取りの良さには感心してしまいました。私としては、お客様にこの撮影風景もご覧に入れたかった程です。

「Something」
 私たちがタップの先生役で「東進ハイスクール」のパロディを演じるシーンの撮影。私などは台本に書かれているたった一行のセリフをMr.Xの指導のもと、しゃべるだけのド素人ですが、押田くらいの役者になると何かを加えたくなるようで・・・
 黒板の前に立って押田のリハーサルが始まりました。タップ・シューズを履いてスタンバイスする押田を見て、「あっ、押田先生、バストショット(上半身のみで下半身が写らない)なのでタップ・シューズは要りません」と演出のMr.X。すると「台本にはないのですが『TAP』のセリフの後に、ダダン、とタップの音を入れてみようと思って」と押田。まだ納得できていない様子のMr.X。長い沈黙の後、「では2パターン(タップ音入りとタップ音無し)撮影してみましょう」と提案。まずはタップの音を入れたバージョン。熱く見守るMr.X。「OK、これで行きましょう」深くうなずきました。出来上がった映像よりも、この二人のやりとりの方が10倍笑えました。余談ですが、あの不朽の名作「カサブランカ」の有名なラストシーンの撮影も、実はこんな感じだったそうです。

「役割分担」
 夏場、自然に囲まれた戸塚のスタジオには珍客があります。その日は蜘蛛さんでした。元気に踊っていた橋爪が「蜘蛛!!」と言って急に止まってしまいました。虫が苦手なようです。そこにサッと飛んできた千夏さん、両手で蜘蛛さんをパッとすくってスタジオの外へポイ。私がその出来事にびっくりしていると、「戸塚の子は虫に強いんです」と淺野。役割分担が決まっているようで。

「ハンドメイド」
 押田の楽しい振付でショーアップした“High School Musical”。ダンサー6人がイスに座ってステップを踏むのですが、ここで広げる本がなかなかのすぐれもの。キャストの一人大日果里がイラストを書いてカラーコピーをした「タップダンス教本」なのです。とてもかわいい絵なのでびっくりしました。目立たないところも手を抜かず努力してくれました。

「しん」
 宝塚の方たちが稽古場で、サランラップの芯をハンドマイクの代わりにして稽古している映像を見たことがあります。今回フィナーレで押田と淺野がハンドマイクを使用するので、それを見習って自宅で使い終わったサランラップの芯を戸塚のスタジオに持参し、テーブルの上に置いておきました。さて、稽古当日、置いたはずのサランラップの芯がありません!! 淺野に「サランラップの芯ありませんでしたか?」と聞くと、「あれ、捨てました」の返事が。私が愕然としていると誰かが「トイレットペーパーの芯ならありますけど」と。「それ使えるね」ということでその日以来、戸塚のスタジオではトイレットペーパーの芯が大出世をとげました。

「ダブルキャスト」
 ジーン・ケリー生誕100周年だからというわけではありませんが、「巴里のアメリカ人」でG.ケリーがソロで踊った“Tra La La”を選曲、かわいい相手役を迎えて踊ることにしました。ダブルキャストの二人は、名前も年も同じ千夏さん。このアイデアは淺野から提案されたものです。振付初期は一人がややリードしていましたが、夏休みに入ったあたりからその差が縮まり、夏の終わりには良い意味で競い合うところまでになりました。「出来ていても手を抜かず」「出来なくてもあきらめず」という気持ちでぶつかってきてくれたと思っております。私自身、とても良い経験、良い勉強をさせてもらいました。

「どこでも しずかちゃん」
 National Tap Dayのリハーサルなどで振付とダンサーを兼ねる先生方の一番の苦労が、場内のスタッフ席からステージへの移動。そう、タップ・シューズを履いたり、脱いだりの時間ですね。今回のY's公演のリハーサルで1秒でも時間を節約したい私と淺野は、あるものを購入。ベースメントさんのカタログで見つけたシューズ・カバー「どこでも しずかちゃん」がそれです。とても便利なのでタップの先生の必需品です。おススメします。
 ちなみに、カタログの隣にある家庭用?持ち運べるタップ板「どこでもタップ君」の最も高価な商品をY's公演初参加の渡部直子が購入したとのこと。ものすごく興味があるので、一度使わせてもらいたいものです。

「差し入れ」
 私の友人松本晋一さんは、舞台に出演すると熱烈なファンの方や生徒さんからプラレールなどの差し入れが多いようです。私も今回「松本さんのプラレール」に匹敵する、ものすごい差し入れをいただきました。そう「レトルトカレー」です。それも、大塚食品やハウス食品のものでなく、「ご当地名物カレー」という“あれ”なのです。しかも、2人のタップ仲間、浦上雄次君と、白川希君から別々にいただきました。何たる偶然!! しかも、一つもダブリ無しです。いくつか紹介しますと、
 ・愛知の牛すじどてカレー
 ・京風鶏カレー
 ・淡路島玉ねぎカレー
 ・大和しじみカレー
 ・岡山白桃カレー
 ・下関ふくカレー etc
 私のためにわざわざ選んで来てくれるなんて。あまりに嬉しくて、2〜3日はいただいた袋のまま眺め、その後さらに2〜3日、袋から出してパッケージを眺めて過ごしましたが、とうとう我慢ができなくなり、5日目の朝ついに!! 毎日ひとつずつ、彼らの踊りを思い浮かべながら味わっております。ありがとう!!

天野 俊哉




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