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Vol.332 アーネスト・ボーグナイン追悼 〜悪役の鏡
 7月8日95歳で亡くなったアメリカの映画俳優、アーネスト・ボーグナイン(以下E.B)ほど女性ファンの少ないスターも珍しいのではないでしょうか?悪役をやれば観客全員を敵にまわせるくらいの憎々しさを、スクリーンいっぱいに溢れさせてしまう。もしE.Bが主人公に殴られたり、刺されたり、殺されたりすれば、観客全員がほっと胸をなでおろす。とてもひどいことを書いてしまいましたが、そんな俳優って、昔も今もいるでしょうか?その徹底ぶりには頭が下がります。
 出世作となった「地上より永遠に」(1953)では、バート・ランカスター、モンゴメリ・クリフト、フランク・シナトラといった大スターを相手に、凶暴さを爆発させる演技で強い印象を残しました。この作品でアカデミー・助演男優賞を受賞したフランク・シナトラの好演も、E.Bの存在が大きいと私は思っているほどです。E.Bがナイフで殺された時には、私も思わず「ざまあ見ろ」と思ってしまいました。
 E.Bはそんな悪役ばかりをやらされていた時代に、「女性にもてない」地味な肉屋を演じた「マーティ」(1955)で、なんとアカデミー主演男優賞を受賞します。とはいうものの、私個人的には物足りなさを感じ、あまり好きな作品ではありません。一方、ミュージカルスタアであるゴードン・マクレエ、ダン・デイリーと共演した「The Best Thing Is Like a Free」(1955)では、あの巨体で歌って踊る器用な一面を見せて、すっかり作品をさらってしまいました。とても陽気で、たぶん実生活ではこういう人なのだろうなと思いました。
 半世紀以上にわたって映画界で活躍したE.Bの作品で私が一番好きなのが、パニック映画として今でも一流作品である「ポセイドン・アドベンチャー」(1973)です。父と映画館で観たのですが、登場するや否や、性格の悪さ全開のE.B。「この男は悪役専門だから絶対に主人公(神父役のジーン・ハックマン)を裏切るから」と私に耳打ちする父。どうなったかここで書くことはできませんが、立派な演技でした。この時、既に55歳だったのですね。
 とりあえず追悼鑑賞で「地上より永遠に」を観たのですが、憎たらしいE.Bは相変わらず憎たらしくて、少しも追悼になりませんでした。
 ご冥福をお祈りいたします。

天野 俊哉




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