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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.306 ドラマに挑戦させられたミュージカル・スターたち
 1930年代から50年代までスタジオ・システムが充実していた時代、ハリウッドのスターたちは契約によって会社の決めた作品に出演しなければなりませんでした。クラーク・ゲーブル、ジェームズ・スチュアート、ベティ・デイビス、エリザベス・テイラーら、大スターが踊ったり、歌ったりしたのはそんな事情からです。
 今回はその逆。ミュージカル・スターたちが普通のドラマに出演させられた話です。

MGMミュージカルの女王ジュディ・ガーランド
「The Clock」(1945)

 1944年のミュージカル大作「若草の頃」の大ヒットでMGMで大スターの地位を確立したジュディ・ガーランドが、ニューヨークのOL役でロバート・ウォーカーの兵隊と恋に落ちるロマンス映画。
 ジュディの乗ったバスをR.ウォーカーが走って追いかけるシーンがあまりに“The Trolly Song”と似ているので1曲出るかと思いきや、ミュージカル・ナンバーに至らず。全篇、「なりそうでならない」ぎりぎりの演出で観客をじらします。地味な白黒画面で、主演2人がずっと同じ衣裳ながら、90分引っ張ってしまうのはさすがです。全く歌の無いジュディも、抑えた演技で魅力的でした。

FOXミュージカルの女王ベティ・グレイブル
「I Wake Up Screaming」(1941)

 こちらはFOX映画で大スターの地位を確立したベティが、何とサスペンスに挑戦です。良く出来た作品ですが、白黒画面に加え、照明もお話も暗い。まあ、彼女でなくても成り立つ映画ですが、彼女が出演しなければヒットはしなかったでしょうし、私が観ることもなかったと思います。不思議なのは、ずっと流れているテーマの音楽が、ジュディ(MGM)の十八番“Over the Rainbow”であること。あまりにインパクトが強いので、映画を観終わってもこの曲が頭から離れません。
 当初、「Hot Spot」というタイトルで試写を行ったところ、ミュージカルと思って観ていた観客が怒り出したため、タイトルを変えたとか。のどかな時代だったのですね。

タップの女王アン・ミラー
「Eve Knew Her Apples」(1945)

 さてジュディ・ガーランドも、ベティ・グレイブルもドラマで成功した例ですが、大変微妙な位置付けなのがアン・ミラーです。
 1940年代前半、コロムビア映画時代に出演したこの作品はなんと、フランク・キャプラ監督の名作「ある夜の出来事」(1934)の再映画化版で、アンはクローデット・コルベールの役をやらされています。夜行バスに長時間揺られても、安モーテルのベッドに寝ても、農家のワラの上に横になっても、彼女の着ているスーツは常にパリッとしていて、ヘア・メイクは完璧です。話は面白いのですが、アンに生活感がなさすぎます。
 残念だったのは、C.コルベールが残した名シーン、スカートをたくし上げて美脚を見せ、ヒッチハイクするシーンが無かったこと。アンの脚だったら自動車だけでなく、飛行機だって止まってくれたはずです。そこまでやってほしかったですね。

 実は男性スターのことも取り上げようと思ったのですが、フレッド・アステアも、ジーン・ケリーも、フランク・シナトラも、コメントの必要がないくらいドラマでも成功しているので、とりあえず今回はここまでにします。

天野 俊哉




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