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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.286 アン・ミラー 〜B級時代の新たな発見〜
 タップの女王アン・ミラーは、ハリウッドでも珍しいキャリアの人です。1930年代、当時一流のRKO映画に出演したかと思えば、1940年代には二流のコロムビア映画に格下げ、ところが1940年代後半になって、超一流のMGM映画で返り咲きます。
 今回取り上げるのは、実は一本もソフト化されていないコロムビア映画時代(1942-1946)のA.ミラーです。
 当時コロムビア映画には、リタ・ヘイワースという大スターがおり、A級ミュージカルの主演はすべて彼女でした。相手役はフレッド・アステアやジーン・ケリー。カラー映画でたっぷり予算をかけておりました。恐らく他の白黒映画で予算は、R.ヘイワースの3分の1以下だったに違いありません。もう立派なB級ミュージカルと言えるでしょう。
 そんなB級ミュージカルでは、せっかくのタップ・ナンバーも衣裳やセットがチープで観ていられないのでは?と思いきや、A.ミラーは十分に美しく、タップのステップも切れの良い振りもすでに出来上がっていて、MGM時代のソロと遜色ありません。どうしてでしょうか?
 実は私も最近知ったことなのですが、A.ミラーによるとハリウッドでは映画のタイトルに名前の出ている振付師の多く(ロバート・オルトン、バスビー・バークレー、デイブグールドetc)はタップの振付が出来ないので、タップ・ダンサー自身に振付を任せることが多かったそうです。A.ミラーには、1920年代にステージで活躍したウイリー・コヴァンというタップの先生がいて、常に映画で振付のアドバイスをしていたそうです。従って、映画会社がどこであれ、またA級であれ、B級であれ、A.ミラーのタップ・ダンスは変わらずすばらしいのですね。
 また、B級とはいえ主役なので、ラブシーンがたっぷり。恋もすれば失恋もする、普通の女性を演じています。「イースター・パレード」「キス・ミー・ケイト」「艦隊は踊る」などのMGM映画では、どちらかと言うと気が強くて態度が大きく、主演男優を誘惑したり、主演女優をいじめたりという役柄が多かったので、キュートなA.ミラーが観られたのはすごい収穫でした。DVD発売されたらご報告しますね。

天野 俊哉




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