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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.278 気になる映画邦題 2
 サクラス戸塚骨董市でアル・パチーノ主演「狼たちの午後」(1975)のパンフレットを買いました。原題は「Dog Day Afternoon」。ニューヨークのブルックリンで実際に起きた銀行強盗事件を基にした映画です。学生の頃に渋谷でリバイバル上映を観た時は「“犬”じゃ様にならないから“狼”にしたんだろうな」程度にしか思わなかったのですが、今あらためてタイトルを見ると“Dog Day”の意味が気になります。英和辞書を引くと「=土用・暑中」と書いてあります。“土用”を国語辞書で引くと「=特に立秋の前の18日間」と書いてあります。じゃあ、“立秋”は?「=8月8、9日頃」とあります。計算すると“Dog Day”とは、“7月20日頃から8月8日頃”ということになります。では、なぜその時期を“Dog Day”と呼ぶのでしょうか。仕事先にアメリカの名門工科大学出身の英語が堪能なベトナム人青年がいるので試しに“Dog Day”の意味を聞いてみたら、「分からないなぁ。とてもスペシャルなワードだよ。ナゼそんなことを聞くんだい?」と逆に質問されてしまい、日本語が全くできない彼に理由を説明するのが一苦労でした。ウィキペディア(インターネット百科事典)を一緒に見ながら説明したところ、「なるほど。でも昔の映画や俳優のことはあまり知らないなぁ」とのことで、A・パチーノのことを知りませんでした。たまたま彼が知らないだけなのか、それとも日本の若い人たちにとってもA・パチーノは、もはや“昔の俳優”なのでしょうか。
 続けてウィキペディアで調べた結果、“Dog Day”とは、“北半球で夏の大犬座が真上に来る7 月初めから 8 月中頃まで”のことで、日本の土用よりも長い時期ということが分かりました。ここでキーワード“Dog”と“犬”がつながりました。そして大犬座の首星(その星座の中で最も明るい星)はシリウスで、その名前はギリシャ語の「焼き焦がすもの」「光り輝くもの」を意味する「セイリオス」に由来しており、別名“Dog Star”と呼ばれていることが分かりました。つまり「Dog Day Afternoon」とは、「焼き焦げるような暑い日の午後」というような意味だということが分かりました。さて“狼”です。ウィキペディアを読んでいて「(これだ!)」と思わず膝を叩きました。まるで狼の目のように青白く輝くことから、中国では“Dog Star”のことを“天狼星”と呼んでいるそうです。“狼たちの午後”の邦題を考案された方は、きっとここに辿り着いて「“狼”で行こう!」と決めたのではないでしょうか。ぜひお聞きしたいものです。答えが「“犬”じゃ様にならないから“狼”にしただけですよ」だったらコケますが。
 追い詰められた犯人たち。取り囲む警官たち。そして冷酷なまでのFBIの手口。タイトルに込められた“狼たち”を意味するものとは・・・。実にすばらしいセンスの邦題です。
 A・パチーノはこの作品で4年連続アカデミー賞にノミネートされました。パチーノの演じる“人の切なさ”が最高です。パンフレットを見ると、この頃は“パシーノ”と表記されていたんですね。そういえば「アル・パシーノ+アラン・ドロン<あなた」(1977)という歌がありました。歌っていた榊原郁恵さんは「アラン・ドロンは知ってたけどアル・パシーノは知らなかった」そうですから、ベトナム人の彼が知らなくても無理はないのかもしれません。
 A・パシーノとA・ドロンといえば、どちらの吹き替えも野沢那智さんが有名です。野沢さんの“ニヒルなパシーノ”と“甘いドロン”の演じ分けもすばらしいです。

Y's取材班






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