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Vol.271 追悼 杉本幸一先生
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私がタップの仕事を始めた頃ですから、もう25年も前になります。
蒲田での私のクラスに、ある中年紳士が体験レッスンにみえました。なぜか3足ものタップ・シューズを持参しているので、たずねてみると「先生(つまり私)のスタイルにあわせたタップシューズで稽古します」とのこと。実に軽やかな足の動き、とてもきれいなタップの音に驚き、とても私の指導では失礼と思い「私の師匠のクラスに行かれた方が良いと思います。私はまだ新人ですから・・・」と本音を洩らすと、「先生のレッスンで学べるものを学びたいので」というお言葉。若い私にはとても力づけられる嬉しい言葉でした。
次の週、今度は新宿で私が担当しているクラスにもう一度みえました。レッスンの帰りに喫茶店で、長い時間タップやミュージカルの話を伺ったのですが、ご自分のことは全く話されませんでした。その方は電話付きの外車を運転されていて、近くの駅まで送っていただきました。
その後お目にかかることもなく6〜7年後、牛丸先生が主宰されている「National Tap Day 1991」リハーサル会場でのこと。長テーブルに勢ぞろいのスタッフさんと先生方。センターに牛丸先生、その横には向井好一先生、並木敏夫先生、中川裕季子先生ら、そうそうたる顔ぶれ。そんな先生方の中に、あの中年紳士がどっしりと(失礼!)座っているではありませんか!!「杉本です」ニコリと先生。ちょっぴり「ローマの休日」のような再会でした。正式に先生のことを知って以来、先生も私もあのレッスンのことには一度も触れませんでした。
今ではベテランの年代になりつつある私が、若いインストラクターたちに「君のやり方でやりなさい」と杉本先生のようにアドバイスすることが多くなりました。
杉本先生のご冥福をお祈りいたします。
天野 俊哉
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