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Vol.2316 宝塚の政界コメディとカルナバル(2024年12月)
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秋の宝塚歌劇は礼真琴さん率いる星組公演。相手役の舞空瞳さんのサヨナラ公演でもあります。私は東京宝塚劇場に千穐楽近くにうかがいました。
『政界コメディ/記憶にございません』
三谷幸喜/脚本・監督、石田昌也/演出
細かくは触れませんが最近アンビリバボーな選挙結果の続出で平凡に生きる私達にはイヤなニュースばかりですが、逆にこのタイミングで観劇するにはぴったりの作品だと思いました。
観劇に先立って三谷幸喜作品をテレビ放映で観た時は『有頂天ホテル』の頃と違って三谷作品も随分大人しくなったな、と感じたものですがその何となく物足りない部分を宝塚歌劇団では異端児の石田氏がすみれコードぎりぎりに書き足して好き勝手に演出をしたようです。そして“献金マンボ”をはじめとするミュージカル・ナンバーが近年まれに見る傑作揃いなので映画よりもはつらつとしてパワーアップしました。
プログラムを読むと三谷氏は
「宝塚歌劇を一度も観たことが無い!」
「映画と舞台は全くの別物」ゆえ、石田氏には「自由にやってください」と伝えたそうでそこが見事に成功したみたいです。
『カルナバル・ファンタジア/Tiara Azul』
竹田悠一郎/作・演出
振付スタッフは
若央りさ・平澤智・百花沙里・西川卓、そしてウエスト・エンドの第一線で活躍中のニック・ウィンストン氏を招聘とか。大劇場のショー初演出の竹田悠一郎氏ですが、カルナバルの一日なんて20年前の『タカラヅカ絢爛』と着想が同じだぜ、とやや心配しながら着席しました。
新人演出家さんゆえの予算配分のマイナス部分はありありと分かるのですがこれは凄くパワフルでダンスを楽しめる作品でした。絶対DVDを買うぞと思わせるショー作品。全編にわたり、決してお金をかけた衣裳じゃないのに照明とのコントラストが優れているので見栄えがしたり、狭い空間の使い方がまた上手い演出家だなと感心しながら眺めてしまいました!
まだ新しい先生なので振付の先生にNOと言えない部分の消化不良が目立ちました。ニック・ウィンストン氏に関して言えば私レベルのセンスではどこがどう優れているのか全く分かりませんでした。他の先生のが良かったのでは?なんて思いながら見てました。
中詰の百花沙里氏振付の長いラテン・ナンバーと平澤智氏のフィナーレの大階段前での男役さんの踊りは近年まれに見る力作で踊っている皆さんも観客の私たちも熱くなりすぎました。もう何回でも見たいダンス。
また、今回の様なストーリー展開のある場合、宝塚に限らず前の景から次の景にわたるとき演出も振付も完結出来ないため、観客の拍手を取りづらいのが残念。あと暁千星さんをフィーチャーしたタンゴの場面が『タカラヅカ絢爛』と似ていて変だと思いました。『タカラヅカ絢爛』でも二番手男役の瀬奈じゅんさんがトップ娘役さんに片想いし、ふられて、そしてヤケ酒飲みながら、しかもタンゴを踊ってましたよ!竹田氏あの作品に思い入れが強すぎたのかも知れませんね。
礼真琴さんと舞空瞳さんの裸足のデュエット・ダンス、フィナーレの“星に願いを”の美しいデュエット・ダンスが素敵でした。銀矯のセンターにティアラを置く、ピンスポをあてる、そして礼真琴さんが舞空瞳さんの頭にティアラを付ける、こうしたヅカファンが絶対見たい場面をきちんと構成出来る竹田悠一郎氏にこれからも期待します!
さて、お芝居には出演していた専科の輝月ゆうまさんがショー作品に出演していなかったのを残念ととるか、良いととるかは今後の課題になるかも知れません。現在の星組の番手をきちんとキープして組子を育て無ければ宝塚はダメになってしまいますからね。うーん?
天野 俊哉
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