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Vol.2280 もうすぐ生誕100年ピエール・エテックス〜フランスのコメディアン
 パリ・オリンピック、宝塚のレヴュー、アラン・ドロンの訃報など、何かとフランスに話題が集まる夏でした。
 そんな中、紀伊国屋書店のDVDコーナーでフランス映画のコメディアン、ピエール・エテックスの作品が何本も発売されていることにびっくりしました。これは2年も前に映画館で開催された《ピエール・エテックス映画祭》の流れで発売されたものだそうで驚きを通り越してもう愕然としてしまいました。

 1928年生まれのピエール・エテックスはチャップリンやキートンらのコメディアンに影響を受け、コメディアンとして劇場で演技を磨いている時にフランスの偉大なコメディアン、ジャック・タチと出会い映画の世界に飛び込んだそうです。

 日本で公開されたピエールの映画は1963年の『女はコワイです』の1作品のみ。そしてピエールとこの作品を取り上げたのは《世界の喜劇人》の著者小林信彦氏ただ一人でした。
 私がコメディ映画に夢中になった頃、フランス映画界ではルイ・ド・フュネスやクレージー・ボーイとして日本に紹介されたレ・シャルロが大人気で、ピエールの名前を聞くことはほとんどありませんでした。

 全く予期せずに出会ったピエールの『女はコワイです』のDVDを早速購入してみました。
 表情を変えず、口数が少なく、スーツを着た内向的青年というあたりはバスター・キートンそっくり。しかも1960年代に白黒映画なんです。さらに本編の前には12分の短編映画まで付いています!
 半世紀前にフランス映画社でキートン映画を復活させた川喜多和子さんとピエール・エテックスを語りたい!
 ピエールの場合、ジャック・タチを思わせる音や効果音の使い方に特徴がありますが、私はそうしたピエールの指先とかのクローズアップ画面でのギャグよりも実に軽快に走ったり跳び上がったり回転したりするアクロバティックな芸に魅せられました。作品のラスト20分にピエールが劇場に忍び込んでから見せるギャグの数々には爆笑しました。公開当時の批評はどうだったのでしょうかね?

 ピエール・エテックスの映画は権利の関係で製作後半世紀近く再上映やソフト販売すら出来なかったそうですが、10数年前に裁判で勝訴して今日に至るそうです。ピエールは既に故人ですが、晩年は作品と共にご自身も劇場で喝采を浴びることが出来たそうです。

天野 俊哉



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