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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.2122 Y'sメンバーに助けられた“Jewels Swing”(2023/6/24)
 松本晋一さん作・演出・振付のタップダンス・エンタテインメント『東京リズム劇場』(2003年〜2019年銀座博品館劇場)が毎年の様に開催されていた頃によくみた夢があります。それは本番で松本さん振付作品を踊っている時に練習し忘れた箇所に差し掛かりまっ青になる!という物です。練習し忘れた!なんて絶対有り得ないのですがこの夢はコワかった!

 私のような年齢になると若い時のように舞台を楽しめなくなるもの、忘れもしない『2005年の東京リズム劇場』のフィナーレ“リズム劇場テーマソング”の元気に脚あげ辺りの振付が飛んだのです。
 つまりは右脚だったか左脚だったか瞬間分からなくなりアタフタしてしまいました。ここから私の悪い癖が始まりました。そう何回練習しても振付を間違うようになったのです。何回が何十回になり、何十回が何百回練習しても必ず本番で間違うのです。
 毎回本番前に完璧にしても今まで絶対間違わなかった箇所を間違い、何とか修正しても今度は別の箇所を間違える。
 ほんと闘い続けました。
 最近『東京リズム劇場』のそうした映像を観る機会が増えたので覚悟して臨むと、意外にも間違えそうになるのですが、その瞬間すぐ元に戻るという事を無意識に行っていたのでびっくりしました。練習を重ねて正解だったのですね。

 さて今回『NATIONAL TAP DANCE DAY 2023』での淺野康子さん振付の“Jewels Swing”。
 3分30秒の長い作品。
 淺野さん独特の難しいリズムのオンパレード!
 仲間たちと山ほど稽古しました。
 今回何がコワかったかって振付の初期に「天野先生はここね」と淺野さんに指示を受けたのが前列のセンター、左に森アしおりさん右に大日果里さんという本来なら淺野さんが立つポジションにわ・た・し?
 責任重大な事になりました。
 とにかく絶好間違えられない状況になり、2月から6月まで毎週京成小岩駅前のフラメンコ・スタジオを借りて稽古しまくりました。

 6月4日(日)の劇場リハーサル辺りからある箇所のつまづきが始まりました。
 ついに始まりました!悪い癖が!
 フラメンコ・スタジオにこもりひたすら稽古。修正に6月18日(日)まで2週間かかりました。最終稽古でまだ難関だった4歩でジャケットのボタンを閉めるというタップとは何の関係も無い振付がこなせずヤバい状態に。本番直前再びフラメンコ・スタジオにこもりひたすらジャケットのボタンと格闘しました。

 せっかく頂いた前列のセンター・ポジション、頑張らないと!20年近く苦しめられたNG癖に負けないようあまり考えすぎず音楽がかかった時だけ通して落ち着いて踊る事に専念しました。
 いよいよ劇場入り。
 場当たり、ゲネプロ、本番昼の回まで何とかクリアしました。
 昼の回が終わった後親しい友人から余りにも真顔なので「どうしたの?」とメールがきました。テンション上げたり、客席にいる知人や生徒を探したりする余裕は全く無くて凄く緊張していました。
 情け無いけど仕方ない。
 今回は死んでも間違うわけにゆかないから、気を抜かずに最後の回を迎えました。

 いよいよ“Jewels Swing”が始まりました。ひとつひとつのステップを丁寧に踏んでゆきます。
 中々覚えられなかったリズムをクリア
 上手く回れなかったパートをクリア
 揃わないステップもクリア
 中盤から仲間たちも冷静になってきたみたい。
 さて一番厄介なパートが来ました。
 森アさんの背中を追って、次に大さんの背中を追って正面を向く所まで来ました。「そろそろジャケットのボタン」、余計な事を考えた瞬間、自分がどこのステップを踏んでいるのか一瞬頭が真っ白になりました。
 ヤバい!
 でもその時、みんなのピッタリ揃ったタップの音が聞こえてきたのです。そのリズムが奇蹟的に私を元の動きに導いてくれました。助けられました!
 そして最後のポーズまでノーミスで踊る事が出来たのです。

 もう若くないしノーミスで踊れたのだからそろそろ現役を引退しても良いかな、何気に考えていたのですが打ち上げでの仲間たちの笑顔を見ていたらもう少しみんなと一緒に過ごしたくなりました。
 またみんなと一緒に稽古したいです。
 ありがとうございました!

天野 俊哉



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