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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.205 旅のコラム 湯河原みかん狩り編
 リズム劇場の東京公演が終わったので、合間を縫って湯河原に行ってきました。といっても、今回は日帰りのみかん狩りです。本当は泊まりがけでゆっくりのんびり温泉に浸かって、おいしいお酒と食事で癒されたいのですが、それは浜松公演後の自分へのご褒美として楽しみにとっておきます。それでも湯河原のひなびた感は行くだけでも癒されます。都会の喧噪を忘れさせてくれる数時間のトリップでも、今の私にはじゅうぶん旅なのです。
 国道134号線から西湘バイパスを進む左手には、雲ひとつない青空と陽がきらめく穏やかな大海原が続きます。パーキングエリアでクルマを下りて、あたたかい陽ざし、冷たい海風、そして穏やかな波の音を耳にしていたら、まるで自然の力でデトックスされているようなリフレッシュ感を感じて、思わず伸びをしてしまいました。きっと気のせいなのかもしれませんが、それでも自然のパワーってすごいなぁと思いました。ついでに化粧室に寄って、さらにリフレッシュ!さあ、再出発です。
 箱根方面に向かう時は、大体いつも二宮あたりで西湘バイパスを下りて、国道1号線沿いのお店で地の旬なものを楽しむのですが、今回は時間の都合もあったので箱根まで一直線。通行料も無料期間中でラッキーでした。
 西湘バイパスを箱根口で下りて、かまぼこの里で昼食を取りました。去年の今頃、ここで冨田先生、みすみ先生、ヒロ先生たちと竹輪を作ったことを思い出しました。楽しかったなぁ。
 さて、お腹も満たされたし、今回のメイン・イベントみかん狩りへ。湯河原みかんは甘味と酸味のバランスが絶妙で、太陽の恵みがいっぱいって感じで大好きです。ちょっと小粒なところも親近感があってかわいい(笑)。
 目的のみかん農園に行くと、いきなり珍百景的なモノが目に飛び込んできました。「はらたいらが愛用していた机」と大雑把に書いてあります。なんでも農園の奥さんが、漫画家のはらたいらさんと飲み友だちだったので貰ったそうです。風刺の効いたナンセンスギャグが生み出された机がみかんの台に使われている様子を目の当たりにして、おかしいのか侘びしいのか一瞬複雑な心境になりましたが、廃棄されずに今でも役に立っているのですから、天国のはらさんも机も本望なのかもしれません。
 さあ、いよいよみかん狩りです。300円で食べ放題!安いですね〜。でも食べ放題といっても、そんなにいくつもいっぺんに食べられる訳じゃありません。4個も食べたらお腹がいっぱいになってしまいました。「意外に食べられないなぁ」と思って考えてみたら、さっきお昼を食べたばっかりでした。
 持ち帰りは禁止になっていて、持ち帰りたい人は500円の籠を買うことになっているのですが、周りのお客さんの様子を見ると・・・、ちらほらとポケットに入れています。夫婦なのか友だち同士なのか、よく分からない雰囲気のおばさんとおじさんペアがやりとりしている声が聞こえてきます。「あらっ、なんだかポケットが膨らんじゃって分かっちゃうわね〜」「そんな毛糸の服なんか着て来ちゃダメだよ。こういうのを着て来なきゃぁ。ホラッ、全然分からないだろう?」と、ダウンジャケット姿のおじさんが自慢気に言いながら、パンパンに膨らんだポケットを両手でポンポンと叩いています。いや〜、どう見てもバレバレなんだけどなぁ。そのおじさんが、ふと私の方を見て、「そうそう。アンタ分かってるねぇ」的な笑みを浮かべてウンウンと頷いています。どうやら“仲間”だと思われてしまったようです。たまたま着てただけなんだけどなぁ、ダウンジャケット。ちゃんと籠を買いましたよ、私は。ホラッ!
 とんだ濡れ衣を着せられそうになりましたが、ケガもせずに楽しい時間を過ごせました。今、家に帰ると、玄関で熟させているみかんの甘酸っぱい香りが迎えてくれます。みかんって、旅のお供だったり、コタツに欠かせなかったり、笑顔のそばにいつもあるような、そんな親しみ感があって大好きです。みかんちゃんにビタミンCをいっぱいもらって年末年始を元気に過ごそうと思います。

淺野 康子






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