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Vol.2020 声優の近石真介さん追悼〜マスオさん?
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声優の近石真介さんが老衰のため91歳で亡くなりました。実のところ近石さんのプライベートやキャリアは全く存じません。
私がテレビにかじりついていた1960年代から1970年代は外国テレビシリーズや外国映画は全て日本語の吹き替え版でした。マリリン・モンローもオードリー・ヘップバーンもゲイリー・クーパーも実に流暢な日本語を喋っていました。日本の声優さんの声、例えばマリリン・モンローの声の専属だった向井真理子さんの声が実際のモンローの声に似ていたかどうかを聞かれると「うん似ている」と言えません。が、私の場合生まれて初めてマリリンを観たときの声が向井真理子さんなので、いまだに本当のマリリンの声に馴染めません。皮肉な事です。
さて、アメリカ映画最高のコメディアンのひとりジェリー・ルイスの『底抜け』シリーズを小学生の時に観て以来、ジェリー・ルイスの大ファンになりました。そのジェリー・ルイスの吹き替えを担当していたのが10月に亡くなられた近石真介さんでした。ジェリーがナイトクラブの給仕を演じた『底抜けびっくり仰天』で大量のパスタをお客の頭からこぼしてしまった場面が最高で、ジェリーのアクションと共に近石さんのとぼけた声が笑わせてくれました。頭にかかってしまったパスタをかき分けながら「あっ、お顔が見えてきましたね!」みたいなセリフを言う可笑しさ。決してコメディ向きの声ではないのに間とかセンスさらにわめいたりする声が良かった。
そしてもう一人、近石さんが演じてぴったりだったのが何とギャング映画の王様、ジェームズ・キャグニーでした。チンピラの胸元を掴み「なんだ、この野郎!ふざけやがって」と往復ビンタをするキャグニーの迫力。近石さんの声が凄く恐かった!以来キャグニーと言えば近石さんなので、本当のキャグニーの声にはいまだに馴染めないでおります。キャグニーの名作『栄光の都』でボクシングの稽古中に相手をボコボコにしてしまったキャグニー、我に返って駆け寄り「すまんジョーイ、怪我させちまったかい?」と声をかけるあたりの上手いこと、お笑いだけでなくドラマティックな雰囲気の作り方が天才的でした。
さて、そんなジェリー・ルイスやジェームズ・キャグニー専門の近石真介さんだったので、フジテレビ日曜日夜のアニメ『サザエさん』の放送が始まり、近石さんが『サザエさん』の旦那さん《マスオさん》の声を担当した時の違和感たらありませんでした。しかしながら、マスオさん=近石真介さんは日本国民ほとんどの支持を得ていると思います。日本の真面目亭主の理想像をアニメの声だけで創り上げてしまったのは凄い事だと思います。
さあ、これから押し入れの奥から日本語吹き替え版で録画したジェリー・ルイスのコメディ映画とジェームズ・キャグニーのギャング映画のビデオテープを探してきて近石さんの追悼上映をスタートしたいと思います。
長い間楽しませて頂きありがとうございました!近石真介さんのご冥福をお祈りいたします。
天野 俊哉
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