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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1990 今昔比較 ビールCM篇
 こんにちは。Y's取材班です。
 いつ飲んでも美味しいビール(類を含む)がより一層美味しい季節となりました。ビールといえば、TVCMでやたらに「旨いねぇ」「美味し〜い!」「ウンマーッ!」などとあまりにもストレートな表現をされると、私みたいなひねくれ者はかえって購買意欲が削がれます。最近はプレミアム系ビールのCMまでが「なんでこんなに美味しいんだろ」なんて言うもんだから「あ〜あ、言っちゃった」とガッカリして、とうとう「美味しい」と言わないビールしか買わなくなりました。そこで今回は「美味しい」と言わないビールCMの今昔を比較してみました。

《都市伝説を生んだ沈黙のCM》
 個人的にはしっかりと苦みが効いている印象のサッポロビールですが、その昔は「爽やかで女性的」な印象だったそうです。そこで硬派で男性的なイメージに転換を図るべく《世界のミフネ》を起用して作られたのが「男は黙ってサッポロビール」のCMです。ポスターはロゴもラベルすらもない超シンプルなデザイン。TVCMの音はBGMのみで「男は黙ってサッポロビール」の文字だけが画面に流れる“黙ったCM”でした。この沈黙のCMは大ヒットし、サッポロビールの入社面接でたった一言「男は黙ってサッポロビール」と言った者が合格したという都市伝説まで生まれたそうです。これを聞いた時、長嶋茂雄さんが立教大学の入試で試験用紙に「野球の長嶋です」とだけ書いて合格したというエピソードを連想しました。ちょっと意味が違うかな?

《更なるイメージ転換》
 ジェンダーフリー(男女の差別をなくす)、ジェンダーレス(男女の区別をなくす)の今の時代に「男は黙って〜」なんて言ったら大変なことになりますね。沈黙のCMから7年後の1977年に誕生したのが、私の大好きな銘柄の一つ黒ラベルです。黒ラベルといえば、2010年から妻夫木聡さんがイメージキャラクターを務めているTVCM「大人エレベーター」を思い浮かべる方も多いのでは。爽やかな笑顔で優しそうな雰囲気の中にもどこか骨太で硬派な印象の妻夫木さんは、黒ラベルのキャッチコピー「丸くなるな、星になれ」のイメージにピッタリです。
 「男は黙って〜」も「丸くなるな〜」も同じような骨太なテイストを感じたので調べてみたら、どちらも同じコピーライター秋山晶氏の作品。しかも長嶋さんと同じ立教大学のご出身でした。これは関係ないですね。
 黒ラベルには、妙に飲みやすくなったりフレーバーを変えたりせずに、これからも苦み走っていてほしいです。そして妻夫木さんには、これからも「美味しい」と言わないでいただきたいです。

《アルコールCMの規制》
 昔は女性がアルコールのTVCMに出演することすらNGだったらしいんですが、今はそこまで厳しくないものの、例えば
・25歳未満のタレントは起用しない
・お酒を飲むシーンで喉元はアップにしない
・喉元を通る「ゴクゴク」効果音は使用しない
など多くの“規制”を酒類業界団体自体が構成している広告審査委員会が設けており、もしかしたらそれらが足枷になって「旨い」「美味しい」みたいなストレートな表現しかできない理由の一つになっているのかもしれません。制作側にはそんな“規制”をかいくぐって、ひねくれた私でも「飲んでみたいな」という気にさせてくれるCMを作っていただきたいものです。
 広告・宣伝関係の自主基準にご興味のある方は
「酒類の広告審査委員会」公式サイトをご覧ください。

Y's取材班



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