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Vol.1938 もうすぐ生誕100年マーサ・ヴィッカーズ〜モデル出身ハリウッド映画女優
 1925年生まれのマーサ・ヴィッカーズはモデル出身、残されたポートレートひとつ見ても映画女優とは異なるムードを持ちあわせています。

 10代後半をユニヴァーサル映画のミュージカル映画やホラー映画で脇役を務めた後、ワーナー映画でハンフリー・ボガート主演、レイモンド・チャンドラー原作の探偵映画『三つ数えろ』を準備をしていたハワード・ホークス監督の目に止まりスカウトされました。ホークス監督は自分の作品のために演技経験の無い新人女優を自分好みのスタイルに変身させるのが得意な人でした。ハンフリー・ボガート夫人になったローレン・バコールが『脱出』でデビューした時はボギーの相手役に相応しい声をつくるために煙草を吸わせて声を潰し、ハスキーヴォイスにしたものです。また『三つ数えろ』に脇役出演した美しいドロシー・マローンには、全く似合わないメガネをかけさせる事でメガネを外した時のエキゾチックな魅力を倍増させました。
 そして『三つ数えろ』ではマーサ・ヴィッカーズにもフィルム・ノワール(犯罪映画)で通用するファム・ファタール(男を破滅させる魔性の女)の雰囲気を持たせる事に成功。それが自慢だったホークス監督は、この後ミュージカル映画やコメディ映画に出演したマーサを観てその平凡な姿に激怒したそうです。勝手な奴ですね。

 『三つ数えろ』は劇場公開当時から分かりづらい展開が数多く指摘されてきましたが、このコラムの為に何度も観てる内にかなり理解出来るようになりました。
 ボギー演じるフィリップ・マーローにからむ3人の女優ローレン・バコール、ドロシー・マローン、マーサが製作当時揃って20歳なんて嘘みたいです。もう犯罪ですね。ボギーが大きな屋敷を訪ねるオープニングでスラリとした容姿抜群のマーサが階段から下りてきてボギーを翻弄する場面が中々の見もの。ただ物語の構成上それ以降のマーサは薬中みたいな状態ゆえ、女優としてどの程度の人なのかは判別出来ませんでした。

 戦後の一時期、ワーナーのミュージカル映画の主要キャストはデニス・モーガンとジャック・カースンのコンビでした。この2人がどの程度の人気があったのかは謎です。さて、2人に絡む女優はジョーン・レスリー、ジャニス・ペイジ、ドロシー・マローン、ドリス・デイそしてマーサとワーナー映画売り出しの若手が選ばれていました。1946年の『ザ・タイム、ザ・プレイス・アンド・ザ・ガール』はテクニカラーの予算をかけたゴージャスなミュージカル映画でした。
 “ア・ギャル・イン・キャリコ”を始め、レオ・ロビンとアーサー・シュワルツ作詞作曲の音楽が素敵で記憶に残ります。ピアノのカーメン・キャバレロと彼の楽団による演奏でもキャバレロとピアノが宙に浮かしたりワーナーも本気出してるのが嬉しい。さらに、コンドス・ブラザーズによる速いタップ・ダンスも見もので、コーラスガールを絡めたりする演出が冴えていてダンス場面を活かしていました。才能あるジャニス・ペイジが出演しているのでミュージカル・ナンバーはマーサに不利ですが、ドラマの部分でのマーサが最高に美しく、そのファッショナブルな着こなしは映画を引き立てています。テクニカラーの画面でのマーサは頬の辺りが少しふっくらして愛らしく映るのでワーナー映画もそこら辺を工夫すればもっと人気が出たのでは。

 『ハイ・シエラ』で知られる女優アイダ・ルピノが主演した『ザ・マン・アイ・ラブ』(1947)をこの正月初めて観ました。アイラとジョージ・ガーシュイン作詞作曲の名曲をタイトルに持ってきたドラマでアイダ・ルピノの歌とジャズメンの演奏場面が本筋より楽しめます。ロバート・アルダやブルース・ベネットやドロレス・モランやアラン・ヘイルの様な達者な俳優に囲まれてしまい、われらがマーサは出番もセリフも少なく何のためにキャスティングされたのか考えてしまいました。

 マーサ・ヴィッカーズはプライベートでは往年の人気俳優と結婚したり彼を棄てたり、映画女優としてよりもスキャンダル誌を賑わす方が忙しかった様です。若くして病気で亡くなったそうです。

天野 俊哉



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