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Vol.1934 宝塚花組公演 レヴュー・アニバーサリー『Fascination』(前編)
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宝塚歌劇団の花組が誕生100年を記念して創られたレヴュー『Fascination』が今年のお正月にNHKBSテレビでノーカット放送されました。そして、このお正月から東京宝塚劇場では東京公演がスタートしたのですが、数日後に劇場スタッフがコロナに感染した為に直ちに休演になりました。とても素敵なレヴューなので何週間もの休演は残念な事。今回のコラムはテレビ放送を観ての感想です。
今回のレヴュー作品には通常の55分よりも10分長い65分という時間が与えられました。かつて《歌劇》誌の中で宝塚歌劇団のショーやレヴュー担当の演出家が集まる座談会というのがありました。演出家の皆さんの不満がこの与えられる55分という時間枠の短さとお芝居に比べて滅茶苦茶短い公演評との事でした。その場に今回の演出家、中村一徳氏がいたかどうか記憶ありませんが、予算のかかる舞台装置と比較的予算の抑えられる映像をバランス良く使った辺りは冴えていましたが、私が気になったのは後半の構成でした。
中村一徳氏は往年の花組のショーやレヴュー作品をかなり研究した様です。いつものガッツリ系の男性振付師に場面を振るだけでなく、自らの演出プランをきちんと伝えたに違いありません。御織ゆみ乃氏振付のオープニングは宝塚の伝説的レヴュー演出家、小原弘稔氏の名作『フラッシュ』(1991年)のオープニングを思わせる、銀矯に立つスターとバックの本舞台に立つスターの両方を活かす演出プラン。今回は本舞台に娘役をズラリ横一列に並べたり効果を上げていました。NHKテレビの撮影スタッフがこの銀矯と本舞台の大切なフォーメーションの両方を見落とさずに画面に収めたのもお見事。またトップスターの柚香光さん以下のカッコイイ若手男役の銀矯の渡らせ方も観客をワクワクさせました。
小原氏が中割のカーテンなど装飾にこだわった部分を中村氏は映像で対処、私はオーソドックスで色彩に優れたカーテンの方が好きですが21世紀のレヴュー作品のあり方なのかも知れませんね。銀矯での永久輝せあさんのソロから水美舞斗さんをフィーチャーしたダンディーなナンバーで映像を多用してました。ちょっと安上がりに見えたのは残念ですが。また、西川卓氏の今流行りの手話を派手にしたような振付が躍動感を欠いてしまってると私は感じました。
新しいトップコンビをガッツリ組ませる食虫花のナンバーは柚香さんの体の動きが素晴らしく、本来なら気味の悪いテーマを芸術まで引き上げました。先の西川卓氏の振付がテーマにピッタリでした。
また、舞台装置の存在がアナログっぽくて嬉しい。柚香さんの顔に当たるピンスポットが消える瞬間の表情が見もの。
さて岡田敬二氏の演出ならさぞ退屈するであろう永久輝せあさんのオペレッタの場面が全く古く感じないのは何故だろうか?しかもヒロインは一時代前の雰囲気の音くり寿さんなのに。音楽の編曲もAYAKO氏の振付も衣裳を無駄にしていない。素敵なコンビなのでもう少し展開があって欲しかったかな?
中詰は様々なデザインのパープルの衣裳でのすみれナンバー。振付は久しぶりのKAZUMI-BOY氏。KAZUMI-BOY氏、ご自身のブログで「タンゴなんて知らないのにタンゴの振付?」「なんちゃってタンゴ」なんて劇団が最も嫌う文章を書いていたのでてっきり干されていたのかと思ってましたので復帰は嬉しいばかり。プラス10分を上手く利用してスター以外の花組のベテランから若手までを銀矯で歌わせる。本舞台では柚香さんと水美さんの男役スターを絡ませたりの大サービス。ダイナミックなフォーメーションでレヴューの前半を魅せました!さて、ひとつだけ気になったのがチャップリンの名作『街の灯』の主題歌“ラ・ヴィオレテーラ”の“めしませ〜花よ”のあとだけキーを変えて演奏または歌わせるのは何故なんでしょう?素敵なメロディーだけに口ずさめなくて気持ち悪かった。以前にもシャンソンを頭の部分だけ歌って、ずっと演奏、曲の最後にまた歌が戻ってくる構成がありました。安蘭けいさんの星組公演『ア ビヤント』でしたが、一緒に観ていた松本晋一さんが「あれ、イヤだね!」と帰り道ずっとこぼしてましたっけ。私ら観客は綺麗な歌は綺麗に聴きたいものなのです。
つづく
天野 俊哉
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