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Vol.1876 千葉真一さん追悼（2021年8月）
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俳優の千葉真一さんが亡くなりました。
憎き新型コロナウィルスに負けてしまったそうです。私世代のヒーローだったのに悔しいです。
近年、息子の新田真剣佑さん、眞栄田郷敦さんの活躍が目覚ましい千葉さんですが、かつて私の少年時代の1960年代後半はまさに《千葉真一時代》でした。
毎週土曜日夜9:00からTBSテレビで放送されていた『キイハンター』が凄い人気で、それも千葉さん主演のエピソードが大人気でした。千葉さんが悪党と戦うだけでなく動く車・オートバイ・船・モーターボート・汽車・ヘリコプター、そしてロープウェイなどありとあらゆる物を使った吹き替え無しのアクション・シーンが凄かった！それを観ないと月曜日に学校に行った時に友達との話題に入って行けないのでした。そして昼休みは決まって《千葉真一ごっこ》でした。当時の千葉さん人気は私のクラスだけでなく全国区でした。浅草のブロマイド専門のマルベル堂でも人気ナンバーワンでした。
伝説のタップ・ダンス公演となってしまった『東京リズム劇場』の2018年版には松本晋一さん脚本・演出の『キイハンター』のパロディ作品が登場しました。痛快なアクション・シーンもあって本家『キイハンター』に全然負けてなかった！
私は東映映画のスターとしてスタートした頃の千葉さんの映画は小さい頃観た『黄金バット』だけです。『キイハンター』で千葉さんファンになってから地元亀有東映の映画館で上映された『やくざ刑事』シリーズ（1970～1971年）は父によく連れてってもらいました。最近DVDBOXが発売されたので追悼上映しなければ。その後、香港のブルース・リーによってもたらされたカンフー映画ブームに乗って千葉さんも東映で沢山のカンフー映画に主演しましたが、私はそれらを観ておりません。ただ、千葉さんがブルース・リー作品の美しいヒロインだった苗可秀と共演した『東京～ソウル～バンコック実録麻薬地帯』（1972）なんてアクション映画は観てるのだから不思議な事です。これは自分が通う小学校の前にある亀有東映のポスターで知って1人で出掛けたのです。
千葉さんの一番の功績はアクション・スターやスタントマンを育てるためにジャパン・アクション・クラブ、通称JACを設立したことでしょう。真田広之さん、志穂美悦子さんらの大スターが育ちました。俳優の堤真一さんや宝塚の振付師として活躍する平澤智さんもJAC出身です。実は、私が大学を卒業してタップダンスの世界に入って最初の仕事がこのJACの新宿コマ劇場公演でした。1985年春頃のはなしです。
当時JACは毎年の様に舞台公演を行っていましたが、千葉さんが尊敬する映画界の巨匠深作欣二監督を監修に招いて製作されたのが『酔いどれ公爵』でした。千葉さんがタップダンスに挑戦する、ことからタップダンス振付として佐々木隆子先生に声がかかりました。志穂美悦子さんが隆子先生からタップダンスの指導を受けていたからでしょうか。そしてある日、私が隆子先生の代稽古を任されJACの稽古場に1人で出掛けてゆきました。ハッキリ言ってびびりましたよ、だって『キイハンター』のあの千葉真一さんですからね。
私はてっきり千葉さんと1対1での稽古だと思っていたのですが、さすが大スター。真田広之さんや志穂美悦子さんをはじめ取り巻きと呼ばれる数十名の方々に囲まれての代稽古となりました。さすがに運動神経抜群の千葉さんですからアクションスタイルのタップダンスは既に完成されてました。大学出の若造なんて小さな存在。千葉さんがステップを踏むと周りの皆さん拍手喝采、千葉さんが「どうだい？」と聞くと周りのヤンヤの声援。私の出番なんてほとんどありませんでした。たま～に「先生、ここはこんな感じで大丈夫ですかね？」と千葉さんが私に聞いてこられる瞬間だけ取り巻きの皆さんがシ～ンとなって千葉さんと一緒に聞き耳を立てるので、相手が大スターであることを超意識して目一杯褒めてから少しだけダメ出しさせて頂きました。
あーコワかった！でも嬉しかった！
この様子を隆子先生に報告するとゲラゲラ笑われてしまいました。
さて、私は新宿コマ劇場での衣裳を着けてのゲネプロにも1人で隆子先生の代わりに。この時はスタッフ席に巨匠深作欣二監督が見えてましたのでさすがの千葉さんもお静かでした。さて、酒場のタップダンスの場面は素晴らしい出来で文句なしでしたが、千葉さん扮する酔いどれ公爵のアクション場面になると俄然ハッスルされたのが巨匠深作欣二監督。千葉さんを囲んだ若手の動きの悪さにスタッフ席から舞台に向かって走り出した！しかも「カットカットカット」と叫ぶものだからコマ劇場のスタッフさんたちが「深作さん、ここは撮影所じゃないのに」と苦笑いしてました。
あー、楽しかった！
こんな素敵な想い出を作って下さった佐々木隆子先生に感謝いたします。
千葉真一さんまだまだお若いのに本当に残念です。ご冥福をお祈りいたします。
天野 俊哉
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