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Vol.1810 もうすぐ生誕100年グロリア・グレアム
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戦後のハリウッドでフィルム・ノワール(犯罪映画)の悪女役で人気の高かったグロリア・グレアムがもうすぐ生誕100年を迎えます。映画を離れてもグロリアが悪女というイメージに見られているのはプライベートでの複雑な結婚歴が深く関わっているようです。何がどうなのかを知りたい方はぜひお調べ下さいな。
グロリアは戦後のハリウッドでMGM映画の専属女優としてスタートしました。当然の事ながらMGMの名物であるミュージカル映画への出演もあります。1947年の『下町天国』です。主演がフランク・シナトラとキャスリン・グレイスン。シナトラはアメリカ陸軍の兵隊役なのですが軍服の衣裳がまるで似合わず、新聞批評では「ウエスタン・ユニオンの電報配達員にしか見えない!」と酷評される始末。歌いも踊りもしない看護師役のグロリアは映画の最初の方だけの出演ですが実はシナトラの心の恋人であった、という事が映画のラストで分かります。ラブシーンすら無いあまりにも奇妙な展開だったので今でも記憶に残っております。
華やかなMGM映画での居心地が悪かったのか?グロリアはハリウッド映画界では格下のRKO映画に移ります。ここでグロリアはエドワード・ドミトリク監督の『十字砲火』という問題作に出演します。当時のハリウッド映画界で誰も取り上げる事の無かったユダヤ人問題を初めて扱ったのです。グロリアは兵隊相手の酒場で働くウエイトレスさん役でわずか2場面だけの出演で、刑事役のロバート・ヤング、愛人役のポール・ケリーとのやり取りがありました。これだけの出演でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたそうですが、かなり点数が甘いと感じました。日本では製作されてから40年も経ってから劇場公開されました。私が最初に観たのがこの時でしたが画質と音声の悪さに驚いたものの、非常に良く出来た作品だなと感心したものです。
オスカーを逃したもののハリウッド映画界はグロリアを一流のフィルム・ノワール女優と位置付けました。『理由なき反抗』のニコラス・レイが監督、モーリン・オハラとメルヴィン・ダグラスが主演した『女の秘密』でグロリアは何と歌手の役でした。MGMでのヴォイス・トレーニングが役に立ったようです。彼女が歌うのはラテン音楽の名曲“エストレリータ”、私の大好きな曲です。お話が同時期にFOX映画で製作された名作『イヴの総て』にとても似ているのが不思議でした。年上の男性を翻弄するファム・ファタール役でのデビューです。
ハリウッド映画界の大スター、ハンフリー・ボガート自身が製作と主演をした『孤独な場所で』でついにボギーと並ぶ主演女優の扱いに。男を惑わすミステリアスな女として登場するのに、お話が進んでゆくと意外に普通の女性なので肩透かしをくらったような印象を受けました。せっかく主演女優にまで上りつめたのに残念な作品でした。
「やっぱり私には助演女優あたりがピッタリね!」と言ったかは謎ですが『突然の恐怖』ではジョーン・クロフォード、ジャック・パランスに次ぐビリング3番目。パランスと組んで金持ちのクロフォードの殺害計画を立てる悪い悪い悪い女。仲間であるパランスに間違って轢き殺されます!『マカオ』ではロバート・ミッチャム、ジェーン・ラッセル、ウィリアム・ベンディクスに次ぐビリング4番目。グロリアはマカオのナイトクラブのボスの女。悪い役ながら主役に惚れて助けちゃう!この惚れた弱みを持つ愛され悪女キャラはグレン・フォード主演の名作『復讐は俺に任せろ』で全開します。グロリアはここでもリー・マーヴィン扮するギャングの女役ですが、孤独な警部グレン・フォードに惚れて助けちゃう訳です。それがバレて、ブチ切れたボスに沸騰した熱いコーヒーを顔にかけられてしまいます。なんてことを!
まあ映画ですから安心して観ていられますけどね。最後、惚れた警部に看取られながら息を引き取る場面は名演技でした。
さて、グロリアの奇跡は1952年に彼女の古巣MGM映画で製作された『悪人と美女』で起こりました。ミュージカル映画の監督として有名なヴィンセント・ミネリがこうした硬派なドラマを監督するのも意外です。ハリウッドの映画撮影所を舞台にした人間ドラマ、まだ新人のカーク・ダグラスがやり手のプロデューサーを演じて魅力的な作品になりました。私はこの作品を5040円と高価なジュネス企画のDVDを購入して観たのですがグロリアに全く覚えがありませんでした。そして今回新たに観直しました。
グロリアはハリウッド映画界に脚本家としてスカウトされる作家の奥さん役として映画が始まって1時間20分を過ぎた辺りに登場します。1950年代に流行したフワッとした白いワンピースを着て悪のイメージはゼロ!ご主人とハリウッドに出向いてミーハー丸出しの賑やかな演技を見せてくれます。やがて色男と遊びはじめ、最期は彼と飛行機事故死。信じられないのがグロリアはこの作品でアカデミー賞助演女優賞を受賞してしまった事です。グロリアには申し訳ないのですが、アカデミー賞の“賞”が“ショー(SHOW)”という事実を証明する出来事としか思えませんでした。
その後、ミュージカル映画の『オクラホマ!』では得意の歌を聴かせてくれましたが、悪女キャライメージの彼女が普通の女性を演じても女優としての個性が乏しく、残念ながら記憶に残りませんでした。
今回は悪女を演じるために生まれてきた様なグロリア・グレアムを取り上げました。
天野 俊哉
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