TAP DANCE LOGO
INSTRUCTORS
STUDIO : 戸塚スタジオ
NETWORK
SCHEDULE
EVENTS
COLUMNS
DANCE TEAMS
LINKS
OUR MASTER : 佐々木 隆子
COLUMNS

Vol.1808 もうすぐ生誕100年ジェーン・グリア〜どこがファム・ファタール?
 もうすぐ生誕100年を迎えるハリウッド女優のジェーン・グリアは犯罪映画等で男を騙して犯罪に巻き込んで破滅させる魔性の女役、ファム・ファタール女優として人気の高かった方です。日本には現在でもこうしたファム・ファタール女優のコアなファンが多くて、フィルム・ノワール映画のDVDはミュージカルやコメディ映画の何倍も売れるそうです。

 さて、ジェーン・グリアですが本当にファム・ファタール女優なのか?私は長いこと疑問を持っております。確かにプライベートでは1930年代の人気歌手、つまりはビング・クロスビーより古くて、ジェーンよりも25歳も年上のルディ・ヴァレーと結婚していた!みたいなファム・ファタールを地でゆくようなところはあるものの、映画に残されたジェーンの演技からは何だかなぁ〜と映画通の方々から睨まれてしまいそうな感想しか持てませんでした。

 では早速《ジェーン・グリア映画祭》を開催して、検証してみたいと思います。
 押入れにしまいこんだDVDの中からジェーン絡みの作品はわずか6本でした。

『ゼンダ城の虜』(1952)
 スチュアート・グレンジャーとデボラ・カーが主演、名優ジェームズ・メイスンとジェーンが悪い役です。学生時代に観たきりの活劇ですが、MGM一流のメイクアップ・アーティストの手にかかったジェーンは実にデボラ・カーに似ている!表情に乏しいので何を考えているのか分からない不気味さはあるものの、あまり悪く見えません。逆に王妃役のデボラ・カーにこの悪女役をやらせたらもう少し映画が面白くなったのでは?と思いました。

『仮面の報酬』(1949・日本未公開)
 長身のロバート・ミッチャムと巨漢のウィリアム・ベンディクスが巻頭から殴りあう凄い展開のサスぺンス映画。ワーナー映画で第2班の監督や編集スタッフを担当してきたドン・シーゲル監督作品なので、心理的な物よりもアクションなど動きでみせ、さらにはメキシコのロケーション撮影ゆえハイテンポで話が進んでゆきます。ジェーンを含めた全員が騙し騙されのオンパレードなので彼女の悪女役が全く目立たない結果になってしまいました。

『君は今海軍の時』(1951・日本未公開)
 20世紀FOXが製作した海軍全面協力による海軍賛美映画。ゲイリー・クーパーとジェーンが主演としてタイトルに登場します。ゲイリー・クーパーはハリウッドを代表する大スターだった方。ますますジェーンの位置付けが分からなくなりました。さらに『雨に唄えば』のミラード・ミッチェル、『ローマの休日』のエディ・アルバートら見事な助演男優らを並べて、しかも戦争コメディというのが不思議。クーパーの奥さん役のジェーンですが、長身のクーパーと並んでもあまり身長差が感じられません。お二人ともコメディ演技がお上手でした。
 私は今回初めて観たのですが沢山登場する水平の中に喧嘩ばかりしている黒髪の筋肉質の男が出てきます。彼がまさかのチャールズ・ブロンソンで、ヒゲはありませんがセリフも多くて主演のクーパーとの場面も長く印象に残りました。ブロンソンがブレークする『大脱走』から10年も前の貴重な姿に感動してしまいました。

『過去を逃れて』(1947・日本未公開)
 ジェーンがロバート・ミッチャム、カーク・ダグラスと主演したフィルム・ノワールの名作のひとつでジェーンのファム・ファタールぶりを楽しむはずでしたが、これを観る前にカーク・ダグラスの自伝を拾い読みしました。撮影中、ジェーンはルディ・ヴァレーとの結婚生活で常に黒いパンティ、黒い網タイツを付け、黒いハイヒールを履くよう強要されていた事をカークにこぼしたそうです。カワイソ。
 どこがファム・ファタール?

『椰子のさえぎる中で』(1953・日本未公開)
 テクニカラーの戦争映画かと思い見始めたところ何とミュージカル映画。ジェーン・グリア、ミッチー・ゲイナー、グロリア・デ・ヘヴンら3女優さん主演。ジェーンさん一応主役なので歌も聴かせてくれるのですが相変わらず表情に乏しくて、ピチピチしたミュージカル・スターのミッチー・ゲイナーが一緒ではお気の毒。

『刑事コロンボ/歌声の消えた海』(1975・テレビムービー)
 ピーター・フォーク主演の人気テレビ・シリーズ。ゲストはロバート・ヴォーン。我らがジェーンはロバートの奥さん役。夫婦関係は冷えきっているのであっさり殺されてしまうのか?と思いきやセーフでした。
 ジェーンはまだ50歳位なのにすっかり老け込んで残念な印象です。お顔やスタイルの良さは変わっていないのでより勿体ないな、と思いました。

 ここまで5本の映画とテレビ・ムービーを観た限りジェーン・グリア=ファム・ファタールの立証は出来ませんでした。今後、新たなジェーンさん主演作品に期待したいところです。

天野 俊哉



Copyright 2005 Y's Tap Dance Party. All rights reserved.