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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1807 瑳川哲朗さん追悼にかえて
 俳優の瑳川哲朗さんが亡くなりました。大河ドラマで新選組の近藤勇役、時代劇、そしてウルトラマンシリーズの隊長役やナレーターでご活躍されましたが、私は俳優としての瑳川さんのご活躍をほとんど知りません。
 それで追悼するんかい!
 皆様ブチ切れ寸前のお顔が目に浮かびます。

 私が蒲田の佐々木隆子先生のタップダンス・スタジオに入門した1981年の事。当時、隆子先生はミス・インターナショナル東京代表、芸能人のお弟子さんを多く持つ美人タップ・ダンサー、さらに持ち前の優れた社交性でマスコミからは引っ張りだこでした。テレビ、舞台には先生だけでなく普通のお弟子さんまで担ぎ出されていました。
 私が初めて南蒲田のスタジオにうかがった頃、NHKTVの『民謡ふるさとまつり』という番組の為のお稽古が狭い狭いスタジオ内で繰り広げられていました。“金毘羅船々”をジャズの演奏で踊る様でした。踊るのは隆子先生と蒲田スタジオに通ってる近所の小中学生の女の子達15名位で、テレビ向けにスーパータップスという派手なグループ名がつけられていました。後年、私の最初の女性パートナーになるTYちゃんはまだ5歳、この頃から既に隆子先生のお気に入りでした。
 その番組がテレビで放送されたのがちょうどお盆の時期。
 さあ、お待たせしました、皆様。
 その『民謡ふるさとまつり』の司会をされていたのが瑳川哲朗さんだったのです。やっとですね!
 まだ大学生で沖縄与論の旅行ツアークラブにどっぷりだったのですが、たまたま東京にいた時にリアルタイムでこの番組を観たものです。
 “金毘羅船々”には先のTYちゃんと同い年の女の子が出演していたのですがテレビのディレクターさんやカメラマンの方というのはカメラ映りの好い女の子にパッとカメラを向けるので隆子先生の希望通りにゆかず、運悪く映らなかった女の子の保護者からはこぼされたり、教室を辞められたり大変だったそうです。瑳川さんも本番の収録では沢山の女の子にインタビューして下さったのですが、放送で残ったのはTYちゃんと田原俊彦さんとコマーシャルで踊っていた女の子のふたりだけでした。

 仕事でご一緒した方々を大切にする隆子先生ですので翌年予定していた新橋のヤクルトホールでの隆子先生のリサイタルの演出には『民謡ふるさとまつり』の大澤慎一さん、そして瑳川さんには是非ゲスト出演して頂こう!という事になりました。なかなか年上の男性と一緒に踊る機会が無かったので瑳川さんなら背は高いし渋いので隆子先生のパートナーにはピッタリだと思いました。隆子先生にとってはミュージカル映画『ザナドゥ』でオリビア・ニュートン・ジョンとジーン・ケリーがデュエットしたナンバーみたいな物が理想でした。
 「私は6月のニューヨークが好き、あなたは?」
 「私はガーシュインの音楽が好き、あなたは?」
という女性と男性が掛け合いで歌う“ハウ・アバウト・ユー”という曲を選びました。隆子先生と瑳川さんなら魅力的な大人のデュエットになるはずでしたが、瑳川さんへのタップの指導の時間が無いなど企画倒れに。それでも瑳川さんはゲスト出演され、ご自身の“明星鉄道”という持ち歌を歌われ、隆子先生がタップを踏みました。“ハウ・アバウト・ユー”はずっとずっと後になってY's Tap Dance Partyの『PRECIOUS』公演で淺野康子さんと押田勝年君が素敵に歌い踊ってくれました。
 そう、あんな感じのデュエットになるはずでした。

 佐々木隆子先生が亡くなってから企画された追悼公演のプログラムには瑳川哲朗さんからもお言葉を頂きました。
 今頃は30年ぶりに天国で再会されてる事でしょう。お時間がありましたら是非“ハウ・アバウト・ユー”をデュエットして頂きたいです。
 瑳川哲朗さんのご冥福をお祈りいたします。

天野 俊哉



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