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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1804 もうすぐ生誕100年ニナ・フォック
 今回は、MGMミュージカルの最高傑作のひとつ『巴里のアメリカ人』(1951)で若い芸術家を支援するお金持ちのパトロン役を演じたニナ・フォックを取り上げます。私は14歳で『巴里のアメリカ人』を観た時以来、ニナ・フォックを有閑マダムもしくは男に棄てられる女のイメージでとらえてきました。さて、若い画家を演じたジーン・ケリーはこの時既に38歳、ニナは歳上と思いきやはるかに若い26歳。別に老けたメイクや衣裳を着てる訳では無いので落ち着いた雰囲気や演技は努力の賜物としか思えませんね。

 音楽家の父親と女優の母親を持つオランダ出身のニナ・フォックは1940年代にコロンビア映画の低予算映画の主演女優として活躍しました。コロンビア映画にはリタ・ヘイワースという大スターがおり、ニナ・フォックもタップ・ダンサーのアン・ミラーもコロンビア映画ではリタ・ヘイワースよりワンランク下の契約俳優でした。

 さて、1945年に製作されたバッド・ペティガー監督のフィルム・ノワール映画『エスケープ・イン・ザ・フォッグ』で21歳のふっくらして若々しいニナが主演しました。“コロンビア映画のクラーク・ゲイブル”ことウィリアム・ライト、コメディからノワール映画まで何でもこなすバイ・プレイヤーのオットー・クルーガー共演。ベレー帽にトレンチコート姿のニナは品があって雰囲気はあるものの、ヘア・スタイルはカジュアルで年相応です。残念ながら私が観たコロンビア映画時代のニナはこれだけです。

 『巴里のアメリカ人』と同じく1951年に製作された白黒の低予算映画『セントベニーザディップ』は歌手のディック・ヘイムズ主演のコメディです。メイクや衣裳は『巴里のアメリカ人』のマダム役と同じでしたが、酔っぱらったコメディ演技が楽しくてディックとのコンビも上々でした。
 アン・ミラーと同じくニナもコロンビア映画から超一流のMGM映画に格上げ契約出来た珍しいキャリアの持ち主ですが、1954年のMGMオールスター・キャスト映画、ロバート・ワイズ監督の『重役室』にもビリング10番目の脇役出演しました。ウィリアム・ホールデン、ジューン・アリスン、フレデリック・マーチ、バーバラ・スタンウィック、ルイ・カルハーンら実力派ばかりの中で、ニナの抑えた演技が光っており逆に目立つことになりました。アカデミー助演女優賞にノミネートされたのも充分にうなずけました。
 その後、マーティン&ルイスのコメディ『お若いデス』、大作『十戒』、史劇『スパルタカス』等に脇役出演しており、その度「おっ、ニナ・フォックだな」と再会を喜んだものです。

 現在、再放送中のアメリカの名作ドラマ・シリーズ『刑事コロンボ』を観ていたら記念すべき第1作目の『殺人処方箋』(1968)に映画『宇宙戦争』で知られるジーン・バリーとニナが夫婦役でゲスト出演していました。精神科の医師を演じるジーン・バリーと妻のニナは結婚10年目のすでに冷めきった夫婦。夫には女優の若い愛人がおり、邪魔な妻のニナを殺害してしまう。まあ殺害されるから刑事コロンボが出てくる訳ですが、『巴里のアメリカ人』でも同じように男に棄てられたので、観ていて「ドラマとは言え何だかなあ〜」と残念な気持ちになってしまいました。
 
 私が観てきたニナ・フォックの映画やテレビドラマは以上ですが、フィルモグラフィには沢山のタイトルが並んでおります。もっともっと新しいニナ・フォックに出逢いたいものです。

天野 俊哉



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