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Vol.180 宝塚歌劇団、初の女性演出家エッセイ「Can you Dream?」
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現在、宝塚歌劇団で「ハプスブルクの宝剣」など、質の良い作品を作り続けている女性演出家、植田景子さんのエッセイ「Can You Dream?」(ソフトバンク・クリエイティブ)が発売されました。宝塚にはかつて、みさとけいさんという女性演出助手がいました。男役スターだった方ですが、退団後、演出家を目指して再スタートを切ったものの、数年で挫折しています。彼女の場合、「スターだった人がなぜ?」みたいな風当たりが強かったようです。
植田さんのエッセイで興味深かったのが、大学を卒業して正式に宝塚歌劇団に入団(入社)するまでの流れでした。写真を見てわかるように、とても品があって夢見るお嬢様タイプのこの女性が、何と篠崎光正先生のもとで演出の勉強をし、「アニー」(1990年公演)の演出助手を任されたというのですから、驚きです。演出助手と言うと聞こえが良いですが、つまりは雑用係であり、「アニー」の場合だと24人の子守、プラス犬の世話など、当時でいう「3K」以上の重労働なのです。私が持っているこの年の「アニー・メイキング」ビデオには、オーディション会場で動き回る姿、「ハード・ノック」のベッドの場面でモリーのフォローする様子、合宿先で朝のジョギングを子どもたちと一緒にさせられる姿など、若き日の植田さんの苦労を垣間見ることができます。彼女が担当した頃は確か、制作会社のトラブルもあって、スタッフ・サイドはボロボロでした。演出家たちにもギャラがでなかったと聞いています。
宝塚関連の本なので、ダーティーな部分にはあまり触れていませんが、それでも「風呂に行く時間がないので、安アパートの台所で髪や身体を洗った・・・」など、「すみれコード」ギリギリの文章もあります。スタッフなんてこんなものです。舞台の世界は、今でこそ多くの女性スタッフがいますが、かつては完全に男の世界でした。さらに宝塚歌劇団というところは、今でも古い感覚の組織なので、単に女性だからという理由で、4回も(募集の無い年もあるので、年数だと6年も)入団試験で植田さんを不合格にしています。それでも、スタッフのケガとか病気などのちょっとしたタイミングで、なんとか仕事を得る事ができたあたり、私たちインストラクターの世界と同じなのだなと思いました。日々努力をして待つしかないのですね。
結構読み応えのある本でした。興味のある方はぜひご一読ください。
天野 俊哉
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