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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1760 もうすぐ生誕100年ドロシー・ダンドリッジ
 歌手で女優のドロシー・ダンドリッジがもうすぐ生誕100年を迎えます。有名なタップダンス・チーム、ニコラス・ブラザーズの弟さんのハロルドと結婚していたドロシーですが、今日まで彼女の音楽や映像にあまり触れてこなかったので上手く書けますかどうか。
 先ずドロシーにはサウンディーズという数分の音楽フィルムの主演歌手として“ペーパー・ドール”の様な名曲=名場面があります。1980年代の後半に沢山のサウンディーズを集めたビデオが発売されましたが、必ずと言って良いほどドロシーのこのナンバーがありましたね。画面も音質も悪いサウンディーズ時代を経て、黒人女性のなかでも際立つ美貌を持つドロシーはやがてハリウッド映画にスカウトされました。
 私が観たのは以下の4作品。

『銀嶺セレナーデ』(1941)
 ハリウッド映画で一世を風靡したフィギュア・スケート・ミュージカルの女王ソニア・ヘニーの最高傑作。
 伝説のバンド・リーダー、グレン・ミラーと彼の楽団が出演して名曲の数々を聴かせてくれます。グレン・ミラーが演奏し、テックス・ベネキー、ポーラ・ケリー、ザ・モダネアーズが歌う“チャタヌガ・チュー・チュー”に、映画では歌手のドロシーとタップ・ダンスのニコラス・ブラザーズがからみ10分近いプロダクション・ナンバーが展開します。ハーメス・パンという一流の振付師が演出したおかげで黒系のキュートな衣裳を着たドロシーは立派なヒロイン役、ブラザーズと軽やかに踏むタップのステップも本格的です。唯一ハロルドと出会ってしまった事だけが悔やまれます。

『アトランティック・シティ』(1944・日本未公開)
 以前、女優コンスタンス・ムーアの生誕コラムでも取り上げたミュージカル映画。ドロシーは興業主の主人公がハーレムのアポロシアターの柿落としに行うショー場面に登場します。
 この場面に出演するのが黒人のエンタテイナーの一流どころなのですね。
 ルイ・サッチモ・アームストロングと彼の楽団、ピアノとタップ・ダンスのチーム、バック&バブルズ、そしてドロシーが縦横無尽に絡み合って10分近いプロダクション・ナンバーを繰り広げます。先の『銀嶺セレナーデ』でも紅一点でしたが、このナンバーでも全く同じような扱いなのでびっくりしました。

『ターザンと密林の女王』(1951)
 ブロンドのターザン俳優、レックス・バーカーの主演作。ドロシーはタイトル・ロールの《密林の女王》役ですが台詞もなく出番もちょっとだけ。いっそのことジェーンの役でも良かったのでは?と思ってしまいました。まだまだ黒人女優は脇役しか演じさせて貰えませんでした。

『カルメン』(1955)
 オール黒人キャストによるブロードウェイ・ミュージカルの映画化でドロシーはタイトル・ロールのカルメン役。見事に主役を勝ち得たのです!使用しているのはビゼーの名曲ですが現代風にジャズのアレンジに。何気に助演のパール・ベイリーに目が向いてしまうのですが、ドロシーとハリー・ベラフォンテの相性も良くて作品は成功しました。ドロシーはアカデミー主演女優賞にノミネートされましたが、時代が半世紀ほど早すぎたのと、グレース・ケリーとジュディ・ガーランドの主演女優賞バトルに巻き込まれ、ドロシーはその存在すら黙殺されてしまったのです。白人のジュディ・ガーランドと共にドロシーも女優として再起をかけていたのに、です。

 つい先日、TSUTAYAのレンタルDVDコーナーをボーッと眺めていたら『アカデミー/悲劇と栄光』(1999)というタイトルが目につきましたのでケースを引き抜いてみると、これが何とドロシーの伝記映画だったのです。こんな映画の存在は全く知りませんでした。しかもドロシーを演じたのがあのハル・ベリー!ハル・ベリーはこの作品の後、『チョコレート』(2001)という作品でアフリカ系アメリカ人として初めてアカデミー主演女優賞を受賞しました。『カルメン』でドロシー・ダンドリッジが叶えられなかった夢を50年近くかけて代わりに叶えた訳ですね。

 今回は半世紀以上昔にアカデミー主演女優賞にまでノミネートされた一流の歌手で女優のドロシー・ダンドリッジを取り上げました。

天野 俊哉



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