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Vol.1705 もうすぐ生誕100年ヴェロニカ・レイク〜ピーカ・ブーって?
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12歳で「ロードショー」という映画雑誌を購読し始めました。今でもよく覚えているのがその号に掲載されていた訃報記事が1940年代パラマウント映画の人気女優ヴェロニカ・レイクだった事です。掲載されていた写真が何やらミステリアスな感じなので女ドラキュラかなと思いました。50歳ちょっとなんて随分若くして亡くなったのですね。
目の覚める様なブロンドの髪で、前髪の半分を顔に下ろすという暑苦しいヘア・スタイルがトレードマーク。アメリカでは“ピーカブー・ヘア”と呼ばれたそうです。ヴェロニカが活躍した1940年代前半のアメリカは戦時中、多くの女性がヴェロニカの“ピーカブー・ヘア”を真似ていました。軍需工場で働く女性にこのヘア・スタイルは機械に巻き込まれるから危険、という事で政府は「工場では髪を束ねましょう!」というPR映像を製作し、ヴェロニカ本人が起用されました。私も観たことがあります。『星条旗のリズム』(1942)というミュージカル映画では“ピーカブー”と自分の事を歌ってました。最後に敵国ドイツのアドルフ・ヒトラー総統の髪を“ピーカブー・ヘア”にしてしまうギャグが最高でした!
さて、ヴェロニカの主演作品の多くを観ているのに、ヘアスタイルを除くと映画女優としての印象があまりに薄いのでこの機会にもう一度観てみました。すると物凄く小柄である事が分かりました。身長152cmの淺野康子さんよりもさらに低い150cmなので背の高い男優とのバランスがとても悪いのです。もう大人と子供にしか見えない。これでは使いにくてキャスティング出来ませんね!パラマウント映画の製作部が困り果ててるその時、とても小柄だけどハンサムでスター性のある男優がひとりいたのです。
それが後年名作西部劇『シェーン』で知られる様になるアラン・ラッドでした。身長168cmと小柄なアラン・ラッドとヴェロニカはダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラー原作の荒っぽい探偵映画『拳銃貸します』『ガラスの鍵』『青い戦慄』にピッタリで大ヒットしました。ただ、ヴェロニカが同時代に活躍したリタ・ヘイワースやラナ・ターナーほど悪女に見えないのが残念。伸び悩んだ様です。
“ピーカブー・ヘア”とミステリアスな悪女役で売ろうとしたパラマウント映画の思惑は外れたと思いますが、逆に私がヴェロニカの作品で大いに気に入ったのがコメディでした。『奥様は魔女』ではルネ・クレール監督のような才能豊かな監督と出逢えたのです。この作品でのヴェロニカは感情豊かで、キュートで、愛くるしく輝いてましたのでミステリアスな役柄よりも向いていた、としか思えませんでした。多分ヴェロニカ自身がコンプレックスであったろう小柄な体型も活発なコメディには効果的でした。映画のラストに人間の男性との間に生まれた小さな女の子がブロンドの“ピーカブー・ヘア”で登場したのが笑えました。
天野 俊哉
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