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Vol.1690 もうすぐ生誕100年デボラ・カー〜『王様と私』が代表作
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『黒水仙』などイギリス映画の名作に主演した後、ハリウッドに渡りミュージカル『王様と私』をはじめとする数々の名作に主演した女優のデボラ・カーがもうすぐ生誕100年を迎えます。
デボラは、オードリー・ヘプバーンと共にハリウッドで成功した数少ないヨーロッパ出身の女優さんです。昔から私の周りにはデボラ・カーのファンが多くて、10年前に亡くなった時に彼女の追悼コラムを書いたのは私ではなく押田勝年君でした。押田君はミュージカル『王様と私』以外に『めぐり逢い』を取り上げていましたね。
さて、ひねくれものの私は昔からデボラ・カーを少しばかり斜め上位から見る事が多いのです。イギリス映画時代の20代前半で『黒水仙』等の名作に主演しているのに、ハリウッドのMGM映画の専属女優になった途端、ジャングル冒険映画『キング・ソロモン』や史劇『クォ・ヴァデス』のヒロインて何なんでしょうね?もちろんそれなりに良い映画でしたが、何となく出演させられてしまった!という感じが痛々しかったです。
ハリウッドの著名な監督達の間でのデボラは、品位のある、近寄りがたい女性を意味する《クラス》と言われていたのが作品に恵まれなかった要因とされています。ハリウッド映画デビューして間もない1949年に撮影されたMGM映画創立25周年記念パーティの映像では、デボラはミュージカル映画の大スター、ジーン・ケリーと隣同士で楽しそうに会話している様子が印象的です。私はその様子を見てから、実に庶民的な人だな?と思っているので《クラス》とは少しばかり見方がちゃうで!と。
ハリウッドのスタジオ・システムに馴染めず独立して作品作りをしていたフレッド・ジンネマン監督は『地上より永遠に』で軽い女というデボラらしくない役柄に彼女をキャスティングしました。髪を金髪に染めて自由奔放な演技をさせた結果、映画が大ヒットしたのに加え、彼女にはそれまでとは違う役柄のオファーが増えたそうです。ただ先にあげた『王様と私』も『めぐり逢い』も基本的には《クラス》であることにかわりありませんね。
デボラは生涯アカデミー賞とは縁の無い女優さんでしたが、多分男性スターに寄り添う役柄ばかりで、自身が作品を引っ張る女性映画が少なかったのがその理由だと私は思ってます。
また、リタ・ヘイワースやバート・ランカスターらとのオールスター映画『旅路』でのデボラの抑えた演技も大変素敵でしたがアカデミー賞を獲るには決定打に欠けたのでしょう。
今回、この生誕コラムの為にデボラがイギリスで主演したという『老兵は死なず』を初めて観ました。主人公が生涯出逢う憧れの女性が全てデボラというのが凄い。堂々の3役であります。有り得ない。しかし、デボラ・カーの主演作品としての強さがあって魅力的で、観て良かったと思いました。
天野 俊哉
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