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OUR MASTER : 佐々木 隆子
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Vol.1684 宝塚歌劇月組公演(2019年12月)
 クリスマスの東京宝塚劇場で月組公演『I AM FROM AUSTRIA』を観て参りました。

 今回は歌劇誌や劇場チラシ、ポスターなどをそれほど注意深く見ていなかったせいかかなり直前まで『I AM FROM AUSTRALIA』と勘違いを。まわりにいるヅカファンから「『オーストラリア』でなく『オーストリア』ですよ、コアラは出てきませんよ!」とご指摘を。チラシをよーく見るとタイトルの上に《日本オーストリア友好150周年記念》さらに『故郷は甘き調べ』なるサブタイトルが付いていました。宝塚とは縁の深い『エリザベート』のウィーン劇場協会というプロダクションが製作した大ヒット・ミュージカルを宝塚により初の海外上演とか。それを宝塚では既に中堅演出家の齋藤吉正氏が潤色と演出を担当。私は齋藤氏の演出という事からオーストラリア=コアラを直ぐに連想し、齋藤氏の好きな着ぐるみのコアラ・ガールズの登場をしっかりインプットしてしまったのです。イカンですな!
 さて、私は宝塚定番の《お芝居とショーの二本立て興行》ではないこの《一本立て興行》を観ていて最初のうちは何の違和感もなく楽しんでいました。若い月組トップ・コンビの珠城りょうさんと美園さくらさんにとつてはハツラツとして良い役柄だな、と納得が出来ました。悪いマネージャー役を演じた月城かなとさん、アルゼンチンのマッチョを演じた暁千星さんもイキイキして客席をわかせていました。

 ただし、1部が終わる頃には頭のなかで賛否の渦がグルグルしはじめたのです。
@「何処かで観た作品だぞ?」
 オードリー・ヘプバーンとグレゴリー・ペック主演の映画『ローマの休日』、クローテッド・コルベールとクラーク・ゲイブル主演の映画『ある夜の出来事』等色々な映画から美味しい場面を使っている。恋の逃避行をした珠城さんと美園さんが月城さん扮する悪徳マネージャーとマスコミの連中に保護されてゆく場面なんかクローテッド・コルベールの映画そのまま。あまりオリジナリティは感じられなかった!
A「小屋が大きすぎない?外箱作品では?」
 主要キャストが少なく、台詞の無いアンサンブルが多いので兵庫の宝塚大劇場と東京宝塚劇場の本公演よりも大阪の梅田芸術劇場や東京なら赤坂ACTシアター、日本青年館のサイズがピッタリの外箱公演の様な気がしました。
B「一本立ての内容ですか?」
 それでも本公演で、と言うなら二本立てのお芝居ならピッタリだったかも。装置も衣裳も低予算、内容も軽いコメディ。無理に一本立て(2時間20分)にしたので後半テンポが悪くなってしまった。観客の全てが待ち望んだショータイムが15分も無かったのはあまりに残念でした。

 さらに劇場を出る頃には製作過程にも疑問が。
 若い月組に良い企画だったけれども宝塚歌劇団の優秀な演出家で同じ、いやそれ以上のレベルのオリジナル作品を創れると思いました。『エリザベート』の様な素晴らしい作品のあるオーストリアでも現代ミュージカルに関しては後進国では。“友好”云々は分かるけれどわざわざ輸入する必要はなかったはず。そもそも感動的な歌曲ってあっただろうか?
 つまりは今後の宝塚での『エリザベート』の上演権利の為にウィーン劇場協会の作品を仕方なく受けたのでは?どんなルートでオファーが来たのかは疑問ですがそんな部分が見えてきてしまいました。だから劇団側は『エリザベート』の小池修一郎氏の様な一流の演出家ではなく中堅の齋藤吉正氏に任せた?なんて考えすぎでしょうか。齋藤氏の台本では「ダンケ」「ウインナー野郎」が度々登場する以外は嫌味もなくまずまずでした。

 宝塚作品であれ、ブロードウェイ作品であれ、ウエストエンド作品であれ、今回のウィーン作品であれ、ひとつのドラマをしっかり固めてゆく実力のある月組だからこそ日本の観客を惹き付ける事が出来たような気がします。珠城りょうさんの月組が2020年により素敵な作品に出逢えます様に。

天野 俊哉



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