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Vol.168 実は新しくない3-D映画
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〜MGMミュージカル傑作のひとつ「キス・ミー・ケイト」〜
「キス・ミー・ケイト」は、2月17日に亡くなったMGMミュージカルのDIVA、キャスリン・グレイスンが主演したブロードウエイ・ミュージカルの映画版です。日本では、制作されて30年以上たって劇場公開されました。現代劇と古典劇がうまくミックスされ、次から次へと流れるコール・ポーターの名曲にぐいぐいと引っ張られます。それまでクラシック畑で静かな演技の多かったK.グレイスンも、シェークスピアの「じゃじゃ馬ならし」の主役ということで、思い切り弾けています。相手役のハワード・キールも、メイクや衣裳が似合っていて最高の出来です。
1950年代テレビの普及に対抗して、観客減少を抑えるために映画会社が映画館でしか味わえない魅力を取り入れた代表が、シネラマであり3-Dでした。近年「アバター」で話題の3-Dは実は60年前のものだったのですね。
制作当初から3-Dでの上映が決まっていたこの作品は、多くのダンス・ナンバーにその効果を見込んだ仕掛けがされています。タップ・ダンサー、アン・ミラーが踊りながらこちら(観客)に向かって色々なものを投げたり、キックしたりする振付はそのためです。ハーメス・パン振付のダンス・ナンバーは現在DVDで観ても見事です。アン・ミラーと絡む若い3人のダンサーは、モダンのトミー・ロール、コミックのボビー・ヴァン、そしてジャズのボブ・フォッシーで、タップもふんだんに踏みます。特出すべきは“From This Moment On”で、上記4人に2人の女性キャロル・ヘニーとジーン・コインが絡みます。B.フォッシーとC.ヘニーのデュエットは今見ても斬新です。
初めてこの映画を観た時驚いたことが2つ。1つはMGM映画の名脇役の2人取り立て屋を演じたジェームズ・ウィットモアと、キーナン・ウインが自分の声で歌い、すてきなタップを踏んでいること。もう1つは、こういった気の利いた演出がジョージ・シドニーという、ごく平凡な監督であったことでした。まあ、これだけ一流のスタッフ、キャストに囲まれていれば、失敗する方が難しいと思いますが。
DVDはワーナー・ホーム・ビデオから発売。是非ご覧くださいね。
天野 俊哉
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