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Vol.1659 もうすぐ生誕100年ゴードン・マクレエ〜美声のミュージカル・スター
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1949年から1956年までという短い期間にハリウッドのミュージカル映画で活躍したゴードン・マクレエがもうすぐ生誕100年を迎えます。
たぐいまれな美声と歌唱力を持ったゴードン・マクレエほどミュージカル映画の名作に恵まれたスターも珍しいかも知れません。何せミュージカルの巨匠リチャード・ロジャース&オスカー・ハマーシュタイン2世のブロードウェイ・ミュージカル『オクラホマ』(1955)と『回転木馬』(1956)の映画版には、2作品共にゴードンがキャスティングされたのですから。これほどの大作なんて一生に一度だけだと思いますけどね。
しかもゴードンのキャリアの中には大作以外に沢山の素敵なミュージカル映画が存在したのですから。デビュー当時、ワーナー映画と契約したゴードンは特にタップ・ダンサーのジーン・ネルソンや最近亡くなった歌手のドリス・デイとの共演が多かったのです。タップ・ダンスの名手ジーン・ネルソンの存在は、実のところゴードンが全く踊れないからで、歌のゴードン&踊りのジーンは持ちつ持たれつの関係で、プライベートでも親しかったのです。
また、演技力もほどほどでラブシーンも下手なあたりはロナルド・レーガン(俳優からアメリカ合衆国大統領になった人物)と似ていて、女優と一緒にいるよりも野郎どもに囲まれている役柄のが絵になっていました。そのせいか『ウエスト・ポイント・ストーリー』や『アバウト・フェイス』みたいな陸軍士官学校を舞台にした男くさい作品での好演が記憶に残ります。ゴードンのいささか無個性なあたりが『二人でお茶を』『オン・ムーンライト・ベイ』のドリス・デイ、『虹の女王』のジューン・ヘイヴァー、『スリー・セイラーズ・アンド・ア・ガール』のジェーン・パウエル、『オクラホマ』『回転木馬』のシャーリー・ジョーンズら歌の上手いスター女優を生かしたい映画会社の思惑とマッチしていた?と私は思っております。多分その事実を一番良く分かっていたのがゴードン自身であり、よって恵まれていた映画人生から早く引退してしまったのではないでしょうか。
さて、私が好きなゴードンの主演作品は以下の5作品。
『虹の女王』(1949)
1920年代ブロードウェイ・ミュージカルの女王だったマリリン・ミラーの伝記映画。マリリン役をジューン・ヘイヴァー、相棒のタップ・ダンサー、ジャック・ドナヒュー役をレイ・ボルジャー、そしてゴードンは若くして亡くなるマリリンの恋人役を。まだまだ痩せてイケメンのゴードン美声をたっぷり。
『ザ・ドーター・オブ・ロージー・オグレディ』(1949)
ニューヨークの伝説の興業主トニー・パスターを演じたゴードンが実に堂々としています。オープニングでは取りあえず軽いタップ・ダンスを初披露。そのあとはサーっとジーン・ネルソンが現れてダンス部門を担当。もうひとりジェームズ・バートンという老タップ・ダンサーが出ていて良い味を出しています。
『ウエスト・ポイント・ストーリー』(1950)
先に述べたウエスト・ポイント陸軍士官学校を舞台にしたミュージカル映画。白黒画面という部分だけが残念な作品。ジェームズ・キャグニーをはじめ、ヴァージニア・メイヨ、ドリス・デイ、ジーン・ネルソンらつい最近当コラムで取り上げたスターだらけ。ゴードンは歌のナンバーより役者としてバランスが取れています。
『アバウト・フェイス』(1953)
ワーナーがかつて製作した『ブラザー・ラット』のリメイク作品。それには確かロナルド・レーガンが出演してました。エディ・ブラッケンやディック・ウェッスンらコメディ系の俳優に囲まれて居心地の良さそうなゴードン。そして特筆すべきは後年ボブ・フォッシーの『キャバレー』で作品をさらうジョエル・グレイが若干20歳でこの作品をさらっている事です!ただしそれは現在から見ての話であり、そのルックスも芸風もおおよそハリウッド向きではありません。これ、皆様に是非お見せしたいです。
『ザ・ベスト・シングス・イズ・ライク・アー・フリー』(1956)
1920年代のチャールストン・エイジに人気の高かった音楽家トリオのデ・シルヴァ、ブラウン&ヘンダーソンの伝記映画で、最近サンフランシスコ在住の松本晋一さんからプレゼントして頂きました。女優は無名のシェリー・ノースだけなので、ここでも男性天下のゴードン。トリオはゴードン、ダンサーのダン・デイリーそして悪役の多いアーネスト・ボーグナイン。彼ボーグナインが歌ったり踊ったりするのが珍しいのでついつい何度も観てしまうのです。ちなみにこの音楽家チームの代表曲のひとつ“You're the Cream in My Coffee”はここ20年にわたり淺野康子さんの公演でのテーマ曲であります。最近、でもありませんが柏田千夏さん石井千夏さんらが可愛らしいピンクのチュチュの衣裳でこの曲を踊っていましたね。
今回は歌手のゴードン・マクレエを取り上げました。
天野 俊哉
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