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Vol.165 和製ミュージカルの第一人者、井上梅次監督追悼
 石原裕次郎主演(近藤真彦版も)「嵐を呼ぶ男」の井上梅次(いのうえ・うめつぐ)監督が、2月11日に87歳で亡くなりました。
 井上監督は日活をはじめとする戦後の映画祭で、カッコ良いアクション映画を作る監督として知られ、昨年亡くなったプロデューサーの水の江瀧子さんと共に日活映画での裕次郎さん育ての親でもありました。まだ若かった裕次郎さんへの愛情から、ついつい厳しくなってしまい、裕次郎さんが「オレ、井上さん苦手だなあ」とこぼすようになり、結局、井上監督は日活でやっていけなくなった、と自叙伝にあります。
 井上監督は、当時の日本でまだ誰もやれなかったミュージカル映画の製作にも意欲的に取り組みました。「ジャズ娘乾杯」「裏町のお転婆娘」「お転婆3人娘、踊る太陽」「素晴らしき男性」「嵐を呼ぶ楽団」「踊りたい夜」など、作品数は多いのですが、残念なことにタイトルだけでなく、出演者やストーリーが似ていて、どれがどんな映画だったのか全く思い出せません。いつも観終わったあとに「日本のミュージカルは、やっぱりこの程度だったのか」と、がっかりしたことだけが共通していました。
 ただ、井上監督のすごいところは、1960年代全盛期を迎えようとしていた香港の映画会社ショウ・ブラザーズ(オーディションで、あのブルース・リーを落とした会社)に単身乗り込んだことでしょう。1967年に作った「香港ノクターン」がそれですが、以前に日本で作ったミュージカルのどれかとストーリーがまったく同じで(どれだったか判別できず)、役者と言語が違うだけだったのには驚きましたが。
 「才能があるから同じことをやり続けた」のか、「才能が無いから同じことをやり続けた」のか、私にはわかりません。私より若い世代の映画ファンまたはミュージカル・ファンたちが、井上監督の遺したミュージカル映画をどう評価するのか、とても興味深いところです。ご冥福をお祈りします。

天野 俊哉



















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