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Vol.1644 ボクシング映画にどっぷりA
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書店で売られているコズミック出版の10枚組DVD BOXの新シリーズ
《ボクシング映画コレクション》
『リングに賭けろ!』
『栄光のチャンプ』
の2種類、20作品全部観てしまった天野のボクシング映画ルポの第2弾であります。
《本物のボクサーが演じると》
体格が良くてハンサムなハリウッド・スターの演じるエア・ボクサーの映画ばかりが多い中、往年のチャンピオンであるマックス・ベアとジャック・デンプシーが台詞を喋る『世界拳闘王』という作品もありました。日本にもプロレスの力道山が自身で主演したプロレス映画がありましたが、自動車を持ち上げてしまったり笑えたのに対してマックス・ベアの主人公は体格の良さだけで顔のアップに魅力が無くて、背広姿がダサくて、ラブシーンも笑ってしまいました。肝心のボクシング場面だけは、とダラダラ観ていたら何とエキシビジョンのショー場面が出てきました。1930年代のMGM映画らしくキレイなコーラス・ガールに囲まれたマックス君は下手な歌だけでなく次から次へとガールズを持ち上げたり、取り合えず首を振り振りビッグアップルのダンスからタップ・ダンスもどきまで披露。タイムステップの足が動いてないけど?セットが替わるとボクシング・ジムに。縄跳びから懸垂まで実に器用にこなしてしまうマックス君。最後は食卓から庭でのランニング・バトルへ。案の定全員ぶっ倒れて幕。松本晋一さんが喜びそうなミュージカル・ナンバーでした!
スゴいぜマックス。
笑えた!
《再映画化・舞台化》
ウィリアム・ホールデン主演の『ゴールデン・ボーイ』は後年舞台ミュージカル化されました。日本でも上演され少年隊の錦織一清さんが主人公を演じてました。1937年の『倒れるまで』はエルビス・プレスリー主演で1962年にミュージカル映画『恋のKOパンチ』として再映画化。
やたら古めかしいウォーレンス・ビアりー主演の『チャンプ』は1970年代にジョン・ボイド主演で再映画化され日本では子役の可愛らしさで大ヒットを記録しました。もちろんベースがキチンとした物に限られますが意外に安易な企画という気がしますね。
《キャスティング》
これほど多くボクシング映画が製作された理由のひとつにバランスの取れた主要キャストの存在があると思われます。
@主人公のボクサー
Aその家族(父・母・兄弟)
Bそのオーナー、スタッフ
Cそのトレーナー、セコンド
Dギャング、八百長関連
Eその恋人
Fその愛人
Gそのライバルのボクサー
H落ちぶれたボクサー
Iアナウンサー、新聞記者
J個性的な観客
いかがですか?主人公を中心に最低10名に役と台詞を振れる訳ですからね。昔のハリウッド撮影所ならものの1分でキャスティングが出来てしまうのです。
《八百長とギャング》
さてこうしたワイルドな世界をワイルドに映画化するならワーナー映画をおいて他にピッタリの映画会社はありません。
1940年『栄光の都』を上の主要キャストに当てはめると
@ジェームズ・キャグニー
Aアーサー・ケネディ
Bドナルド・クリスプ
Cフランク・マクヒュー、ジョージ・トビアス
Dエリア・カザン
Eアン・シェリダン
FここではEの愛人アンソニー・クイン
もうこれ犯罪映画、ギャング映画のキャスティングですよね。『栄光の都』で殺されてしまうのはギャング役のエリア・カザンだけですが、『倒れるまで』ではオーナー役のエドワード・G・ロビンソンとギャング役のハンフリー・ボガートが選手控室で相撃ちをして2人とも死んで行きます。もうメチャメチャなボクシング映画になってしまいました。
八百長試合を無視して勝ってしまった主人公ロバート・ライアンがギャングから逃げ回る『罠』は怖かった!八百長には逆らえない世界なのでしょうかね?
《ここでも人種差別》
本当のボクシング界にはジョー・ルイスやモハメッド・アリの様な黒人の大スターがいるのにかつてのハリウッド映画では人種差別が激しくて黒人の出演場面は限られていました。私の記憶ではたったの2作品。『ゴールデン・ボーイ』ではウィリアム・ホールデンが激闘の末黒人ボクサーを死なせてしまう。
『ボディ・アンド・ソウル』では主人公ジョン・ガーフィールドが病持ちの黒人ボクサーと闘い、その結果黒人ボクサーは選手として再起不能になってしまう。扱いが悪すぎの時代だったのです。
《クレジットなき時代》
「扱いが悪すぎ」と言えば、ハリウッド映画ではスタッフのクレジットも酷くて、ボクシングの指導をしたスタッフの名前がタイトルバックに登場したのはわずかに数本でした。
ちなみにダンスの振付でもタップ・ダンスの振付はほとんどがタップ・ダンサー自身なんですが、映画のクレジットには映画会社が契約した振付師の名前しか登場しません。
MGMミュージカルならロバート・オルトン
FOXミュージカルならセイモア・フェリクス
ワーナーミュージカルならルロイ・プリンツ
といった具合にです。
《次のボクシング映画コレクションにはコメディ作品も》
残念だったのが名コメディアン主演のコメディ作品が全く無かった事です。チャールズ・チャップリン、バスター・キートン、アボット&コステロ、ダニー・ケイ、ジェリー・ルイスなど大スターもリングに上がって立派な笑える試合をしてますので是非DVD BOXの発売を期待します。
いかがでしたか?
打倒ラグビーになりましたかね?
今回は突っ込みだらけのボクシング映画のご紹介でした。
天野 俊哉
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